老けない人は「腸の若返り」ができている! 30代から進行する認知症はこう予防する

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このように、活性酸素は腸や脳の老化や病気を引き起こす大きな要因となっているのですが、その発生を完全に食い止めることはできません。呼吸によって取り込まれた酸素のうち2%は活性酸素と化すからです。先ほど触れたように、活性酸素は有用な働きもするため、まったくの悪者ではないのですが、現代人の多くは、活性酸素がつくられやすい環境にあるといえます。化学物質や紫外線、電磁波などにさらされ、食生活からも日々酸化した食物を摂っているからです。

体と脳をサビから守ってくれる抗酸化酵素「SOD」

活性酸素を何とかしなければならないのはいうまでもありませんが、発生を食い止められないからこそ、人体は活性酸素による細胞へのダメージを防ぐシステムを用意しています。それは「抗酸化酵素」と呼ばれる体内酵素です。その代表的なものにSOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)と呼ばれるものがあります。

SODは活性酸素を酸素と過酸化水素に分解し、中和します。そして、SODによって分解されて生じた過酸化水素は、さらにカタラーゼとグルタチオンペルオキシダーゼという体内酵素によって酸素と水に分解され、無害化されるのです。つまり、体内でSODが産生されれば、細胞を若く元気な状態に保つことができるというわけです。

ただ、SODは中年期以降になると急激に産生量が低下していきます。加えて腸が老化し、腸内細菌の働きが悪くなれば、ますます産生量が減っていきます。だからこそ、働き盛りの年代から、腸の環境を整えて健康を維持し、認知症の防止をしておいたほうがいいのです。

ある年齢を境に急に老け込み出した人は赤信号です。ただでさえ作られにくくなっているSODが、腸の老化で輪をかけて少なくなり、活性酸素による細胞の老化を食い止めることができなくなっている状態と考えられるからです。見た目の老化はもちろん、気力がなくなる、気持ちが沈むといった精神面の老化も、大本は腸が一気に老けて、体内酵素をつくり出せなくなっているといえます。

SODの産生量の低下を緩やかにし、腸がいつまでも若く健康に働けば、身体も脳もサビません。身体も頭も健康な状態で、与えられた寿命を生き抜くことも不可能ではないのです。つまり、認知症700万人時代の最善の予防策は「腸」の若返りにある、といっても過言ではないのです。

新谷 弘実 ベス・イスラエル病院名誉外科部長

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しんや ひろみ

1935年福岡県出身。1960年順天堂大学医学部卒業。1963年外科医としてのトレーニング(レジデント)を受けるため、ニューヨークのべス・イスラエル病院に留学。
その後、胃腸内視鏡学のパイオニアとして活躍。1968年に「新谷式」と呼ばれる大腸内視鏡の挿入法を考案。
世界で初めて開腹手術をすることなく、大腸内視鏡によるポリープ切除に成功し、医学界に大きく貢献する。
日米でおよそ35万例の胃腸内視鏡検査と10万例以上のポリープ切除を行った、この分野の世界的権威。
現在、米国アルバート・アインシュタイン医科大学外科教授。
著書にミリオンセラーとなった『病気にならない生き方』(サンマーク出版)シリーズをはじめ、
『胃腸は語る』(弘文堂)、『酵素力革命』(講談社)、『水と塩を変えると病気にならない』(マガジンハウス)など多数ある。
 

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