伝統的な商業銀行強みにアジア地域で成長を加速--三菱東京UFJ銀行頭取・平野信行

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たとえば、人民元の国際化がある。規制緩和で起債も進んでおり、われわれもいくつかの案件を手掛けている。今後はアジアの通貨や投資家を念頭に置いた市場づくりが望まれる。そうした中で円という通貨が果たすべき役割もある。サムライ債は発行体が多様化しており、逆にいえば、投資家に対して多様な投資機会を提供できることにもなる。世界で成長力の最も高い地域で、われわれに何ができるのかという観点で、構えを広くしてやっていきたい。

ただ、今後の道のりについて十分な絵が描けているわけではなく、金融機関や投資家、当局含めて日本国内の議論が必要だ。アジアの主要国間でもまだ議論の余地はある。アジアボンドといわれる市場について、もう少し目を向けたほうがいい。

--ASEAN(東南アジア諸国連合)域内では一定の基準を作り、銀行を統一的に承認する仕組みも検討されているようです。

これも金融市場整備の一貫といえるだろう。欧米で混乱が起きると、アジアの国々も被害を受ける。実際、今回も欧州の金融機関がアジア向けの融資を縮小する動きが見られる。それだけに、アジアの中で金融システムを整備し、充実させる必要がある。さまざまな取り組みの中で域内の成長が支えられる仕組みができることを期待している。

ひらの・のぶゆき
1974年京都大学法学部卒、同年三菱銀行入行。2005年に東京三菱銀行常務取締役、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)取締役。09年にMUFGのアライアンス戦略室担当。銀行の専務、副頭取を経て12年4月に頭取就任。

(聞き手:井下健悟、浪川 攻 撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済2012年4月14日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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