伝統的な商業銀行強みにアジア地域で成長を加速--三菱東京UFJ銀行頭取・平野信行

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──欧州の債務危機は峠を越したような雰囲気も見て取れます。金融界に変化はありますか。

手短にお答えすれば、変わったと思う。注意深く見る必要があるが、切迫感がなくなった。大きいのが欧州中央銀行(ECB)による3年物の流動性供給だった。これで欧州金融機関には3年間の社債リファイナンス需要を賄って余りある資金が提供された。低いコストで時間を買ったともいえ、足元は緊張感がやや緩んでいる。しかし、欧州の金融機関にとって本当に足りていないのは資本だろう。リーマンショック後に負の遺産処理が十分でなかった中、直近のソブリン問題が起きた。かつて日本がそうだったように、いくら流動性を供給しても不良債権処理が進まなければ、本当の意味で銀行システムの健全性は回復できない。

──ローンや事業部門の売却打診は減少しているのでしょうか。

欧州の銀行経営者と話をすると、「(ECBの資金供給で)時間をもらったので、2~3年かけて、やっていけばいい」といった意識が強いように感じる。(打診が)なくならないにしても非常にスローダウンした。ただ、一歩先に出れば優位に立てるので、賢い経営者はタイムリーに処分をしてくる可能性もある。

アジア金融市場の整備と拡大がカギ

--昔と比べると海外融資で円建ての比率が落ちたように思われます。「円」の融資や債券拡大が邦銀の一つの役割ではないですか。

それはひとつ考えていかなければならないことだが、必ずしも円に限らず、アジアの金融市場をどのように成長させていくかが、日本の金融機関にとっても重要な課題だ。

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