クロスピア2015秋

世界と競争しながらトップランナーを目指す
改革で問題発見・解決・発信力を育成

2020年から、大学入試が大きく変わる。現在のセンター試験に変わって、新たな学力テストが導入されることになっているが、詳細はまだ検討中だ。そこで駿台予備学校を擁する駿河台学園の中村聡明広報課長に、改革の狙いと意義、これからの大学のあり方などについて伺った。

入試改革と教育改革は、
日本を変える大改革

政府と文部科学省が進める今回の教育改革は、明治以来の大改革と位置づけられています。日本社会は今、西洋諸国に「追いつけ、追い越せ」でやってきたキャッチアップの時代から、世界と競争しながらトップランナーを目指す時代への転換点にあり、そのための人材育成のあり方を、根本的に見直す必要に迫られているためです。

駿台予備学校広報部 広報課長
中村 聡明
(なかむら さとあき)
1992年、駿台予備学校へ入職。難関大学志望のトップ層を中心に数多くの受験生の進路指導・受験指導に携わる。駿台お茶の水校勤務後、駿台千葉校副校舎長。高校やイベントなどで多数の講演を行う。現在は駿河台学園広報部に所属。

今回の改革は、高校教育改革、大学教育改革、大学入学者選抜改革の3本柱からなる「高大接続システム」の改革です。その狙いは、学力の3要素((1)知識・技能、(2)判断力・思考力・表現力、(3)主体的に学ぶ態度)を備えた上で、世界と伍していける能力を育てることにあります。端的にいえば、「自分で問題を発見し、その問題に対して自ら解決策を見つけ、さらにそれを世界に向けて適切な言葉で発信できる日本人」を育成するということになります。なぜなら、こうした問題発見・解決・発信力を持った人でないと、世界では通用しないからです。

その一例が、英語教育です。これまでの英語教育は、読み書きの能力を育てることはできても、英語をしゃべる能力を鍛えるという点では不十分なものでした。そこで「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能の獲得をめざして、高校だけでなく、小中学校の段階から英語の指導体制を強化すると同時に、外部人材を活用したり、英語の外部テストを活用した能力評価を促したりする改革が進められています。大学入試でも外部テストを活用する事例が増えているほか、大学教育でも「スーパーグローバル大学」を中心に、英語力を備えたグローバル人材の育成に力を注いでいます。

物理的な問題を乗り越え
多面的に評価する入試へ

大学入試改革も、狙いは同じです。現在の大学入試は、教科単位で知識を測定するペーパーテストが中心です。知識自体は軽視すべきではありませんが、今後、問題発見・解決・発信力を育てる方向にシフトする大学教育を受ける学生の能力を見るには、知識だけでは不十分です。そこで、今回の大学入試改革では、能力・意欲・適性を総合的に評価する入試への転換が進められることになったのです。

もう一つ、大学入試改革には重要な背景があります。大学進学率の高まりと、大学数の増加によって、大学生が多様化し、大学で学ぶ能力が不足した学生が増加していることです。学力試験のないAO入試と推薦入試で6割強の学生を入学させている私立大学もあるなど、大学で学ぶ力が不足している学生の割合が増えているのです。

そこで、大学教育を受ける能力があるかどうかを判定する「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称:以下評価テスト)が、現在のセンター試験の代わりに導入される予定です。一方、高校段階までの基本的な学力を測定する「高校基礎学力テスト」(仮称)は当面、大学入試には利用されない見込みです。さらに、大学が個別に行う試験についても、教科学力だけでなく、高校での活動や、文章表現力、コミュニケーション能力など、受験者の多様な能力を評価することが求められました。

評価テストは、2020年から導入されることが決まっています。文部科学省の専門者会議によれば、当初は選択式と短文の記述式で出題し、センター試験よりも出題科目数は簡素化されます。また、教科ごとの出題に加えて、他の教科・科目や社会との関わりを意識した問題や、多数の正解があり得る「連動型複数選択問題」(仮称)も出題されることになります。そして、ゆくゆくは、文字数の多い記述式で思考力を測定したり、コンピュータを使ったCBT方式を導入することが決められています。

ただし、評価テストの詳細についてはまだ検討段階にあり、具体的な出題イメージは未定です。また、多面的な評価ということで、全員に小論文や面接を課すとなれば、志願者の多い大学では、場所や時間、採点者などの物理的な問題が立ちはだかってきます。英語の外部テスト利用にしても、家庭の経済状況が影響してくる可能性があります。実施までには、このように様々な課題がありますが、それでも実施期日は決まっているため、現在、急ピッチで準備が進められています。

駿台予備学校では、高校教員向けに、新しい入試についてのシンポジウムを企画したり、科目横断型の「未来学力診断テスト」を実施したりと、新しい入試に向けた準備を既に始めています。評価テストの内容が具体的になり次第、速やかに対応する用意は出来ています。

大学教育の転換により
日本企業が変わる可能性も

入試改革と同時に、大学教育の中身も変わってくるはずです。現在、日本の大学は世界との激しい競争にさらされています。評価の高い大学には、優秀な学生が集まり、優秀な人材が根付くため、日本の力を強化するには、日本の大学が世界の大学との競争に勝っていく必要があるからです。すでに日本でも、高校からそのまま海外の著名大学を目指す動きがあり、東大を“滑り止め”と考える層も出現しています。今年から始まった東大の推薦入試や、京大の特色入試は、そうした危機感のあらわれだと思っています。

日本の大学が競争力をつけるためには、冒頭で触れた世界に通用する人材を輩出できるかどうかにかかっています。すなわち、問題発見・解決・発信力を、いかに大学教育の中で伸ばすことができるかということです。そのためには、アクティブ・ラーニングの導入や、ラーニング・コモンズの整備など、新たな教育方法や教育環境の整備を素早く進めて行かなくてはなりません。

やがて改革が軌道にのれば、自分で積極的に課題を探し、他人と協働して解決し、それをどんどん外部に発信して、自分の環境を変えていく人間が数多く育つことになります。そうした人材が増えれば、日本の企業文化や、日本社会のあり方も大きく変わっていくはずです。高大接続システムの改革は、日本を大きく変える改革でもあるのです。

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