ホークスとスワローズ、親会社の意外な評価 その株価はいったい何を示しているのか

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ただ、そうとも言い切れない。2社の直近本決算(2015年3月期)における売上高と純利益を比較してみたい。

①ヤクルト  ②ソフトバンク   ②÷①
●連結売上高(2015年3月期)
3679億円  8兆8670億円   23.6倍
連結純利益(2015年3月期)
250億円   6683億円    26.7倍

 

ヤクルトとソフトバンクは、売り上げベースで23.6倍、純利益ベースで26.7倍もの差がある。にもかかわらず、株式市場の評価である時価総額では、7倍の差しかついていない。

株価の割高・割安を評価するための代表的な指標であるPER(株価収益率)で比較してみても同じ傾向にあることがわかる。PERは株価を一株当たり利益で割るか、時価総額を純利益で割って算出する指標だ。

 ヤクルト   ソフトバンク
■株価(2015/10/27終値)
6390円     6602円
■1株当たり純利益(2015年3月期)
142円      557円
PER
45.0倍     11.8倍

 

東証1部全体の平均PERは9月末時点で約17倍。一般的にPERは20倍前後が平均的ともいわれている。つまり、投資家から見てヤクルトは市場平均よりも高く、ソフトバンクは市場平均よりも低く評価されていると見て取れる。

評価に差が出た理由とは?

この理由はなんだろうか。決算短信や有価証券報告書など公表されている業績概況や財務データなどからの読み取れる範囲で分析・推測してみたい。

まず、ヤクルトとソフトバンクは利益の中身が違う。

ヤクルトは、乳酸菌飲料の販売という事業の柱を持っており、利益の源泉がはっきりとしている。対して、ソフトバンクは通信事業を中心としながらもさまざまな事業を営んでいるものの、2015年3月期の純利益は、有価証券報告書をよく読むと次のように記載されている。

「関連会社のアリババに係る持分変動利益を599,668百万円計上しました。これは主に、同社が2014年9月19日にニューヨーク証券取引所に上場したことに伴い、同社が新株発行を行ったほか、同社が発行する転換優先株(Convertible Preference Shares)が普通株式に転換されたことによるものです。」(2015年3月期ソフトバンク有価証券報告書p.196)

つまり、一時的要因であるアリババの上場がなければ、当期純利益の大部分が失われていた可能性があるということである。

その前の2014年3月期についても、ソフトバンクの連結純利益は5861億円だったが、約半分の2538億円は、イー・アクセス(現ワイモバイル)やガンホー・オンライン・エンターテイメントを子会社化した際の株式の再評価益によるものだったようだ。

このように、ソフトバンクの利益は投資の成否や会計的な事由によって大きく左右される傾向にあるということが、投資家が高値を追えないリスク要因になっているのではないかと推測できる。ヤクルトは2016年3月期の業績見通しを公表しているが、ソフトバンクは10月27日現在で、未確定要素が多いため業績見通しは未定としている。

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