ユーロ紙幣が支える「想像の欧州共同体」--ロバート・J・シラー 米イェール大学経済学部教授

ユーロ圏分裂の可能性が議論されている。たとえば、ギリシャがユーロを放棄してドラクマを再導入すれば、最終的に欧州の安定を脅かす政治的な失敗になると見る人は多い。メルケル独首相は昨年10月に連邦議会で演説し、この問題について率直に語った。

「さらに半世紀、欧州で平和と繁栄が保証されていると信じるべきではない。保証などされていないのだ。だから私はこう言う。もしユーロが失敗すれば、欧州が失敗に終わる、と。それは起きてはならないことなのだ。何世紀もの憎悪と流血の後、先人が50年以上前に始めた欧州統合のプロセスを、あらゆる賢明な手段によって守る歴史的な義務が私たちにはある。それに失敗したら、次に何が起きるかを誰も見通すことはできない」

欧州では、15世紀半ばにルネサンスが始まって以来、250以上の戦争があった。欧州が過去半世紀にわたり享受してきた共同体意識の維持を強く訴えるのはもっともだ。

興味深い内容でありながら、見過ごされてきた一冊の本がある。ジョージタウン大学のチャールズ・カプチャン教授が記した『How Enemies Become Friends(いかにして敵は味方になるか:未邦訳)』だ。

本書は、長く対立してき国家同士が友好関係を築くに至るプロセスについて、多数の歴史的事例を再検討している。著者が挙げた例は、スイス連邦の形成(1291~1848年)、最初の欧州人が米国に到着する1世紀ほど前のイロコイ連合の創設、合衆国の建国(1776~89年)、イタリアの統合(1861年)、ドイツの統合(71年)、ノルウェーとスウェーデンの和解(1905~35年)、アラブ首長国連邦の形成(71年)、70年代のアルゼンチンとブラジルの和解などである。

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