「ユーザー体験」を極めれば広告効果も高まる 老舗メディアの逆説的な試み

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■品質面でも向上させた「ネイティブアド」

同時に「アトランティック」は、2015年に自社内のマーケティング部門「Re:think」の人員を20%増やした。キャンペーンでのインタラクティビティとデザインのテコ入れが目的だった。

クアルコムのシリーズ・キャンペーンでは、作り込んだアートとしてのビデオや情報をもっと見てもらおうと、オリジナルのイラストを盛り込んだ。

このクリエイティブ面での微調整が、同誌のネイティブアドの評価を高め、2014年における「アトランティック」の広告売上の60%を占めるまでになった。2015年もまた、10月までの広告売上において、30%も成績が伸びた主要因になっている。

「一気にたくさんのことを実行した」と、バイスプレジデント兼発行人のヘイリー・ローマー氏は語った。「読者向けのデザインリニューアルだったのだが、報われた。ネイティブアドをサイトに統合する手立てについても考え直した。エンゲージを高めたい広告主に応えていく。それが絶対目標だった」

編集コンテンツと混同する読者も

エンゲージメントは重要な目安である。だが、ブランドイメージの影響力を高め、購買につながるように仕向け、さらにはこれらがうまくいっているかを計測することこそが、パブリッシャーの次なる使命となるだろう。「読者はネイティブアドを、編集コンテンツと広告、どちらとして見ているのか?」という疑問が浮上してきたのだ。

コンテンツマーケティングプラットフォームの「コンテントリー(Contently)」は2015年7月、「アトランティック」をはじめ、7つのパブリッシャーが配信しているネイティブアドを対象とした研究を行った。「アトランティック」に関しては、回答者の約半数(47%)が、ネイティブアドを編集コンテンツだと思い込んでいた。ほかのパブリッシャーのネイティブアドは、さらに混同されていたという。7つの広告のうち、5つまでを編集コンテンツだと思い込んでいた人がほとんどだった。

「記事広告」などのラベルをつけても、編集コンテンツのような風貌のネイティブアドは、いまなおパブリッシャーに葛藤をもたらす。ローマー氏は、記事広告を識別しやすいように、サムネイルへ「スポンサードコンテンツ」というラベルを表示しており、ネイティブアド配信においても早くからガイドラインをつくったと説明している。

Lucia Moses(原文 / 訳:南如水)

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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