日本電産の後継候補が突然会社を辞めた事情 在籍した2年余りの間に何があったのか

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呉氏が去った家電産業事業に対して、永守氏は即座にメスを入れている。10月22日に東京で行われた決算会見では、「海外事業の改善が急務」と明確な課題意識をあらわにしたうえで、同分野の海外子会社の経営陣をほぼ全社交代したと明らかにした。

さらに永守氏は「15%の営業利益が可能と思う人にやらせる。『海外は特別、手を出すべきでない』と言う人もいたが、日本のマネジメントは海外に通用するという自信を持ってやっていく」と決意を語った。

後継者探しはどうなる?

後継者候補の筆頭と目される片山氏

日本電産にとって最大の課題ともいえる、永守氏の後継者探しへの影響はどうか。現在、同社の代表取締役には永守氏のほか、創業メンバーの小部博志氏、元シャープ社長の片山幹雄氏がいる。

特に今年6月に就任した片山氏は後継者候補の筆頭と目される。21日の会見でも、永守氏は片山氏を「下手なプライドは捨てて取り組む強い気概がある」と評価している。

ただ、片山氏は就任してから日が浅く、実績はまだない。6月に開かれた株主総会で永守氏は「うちは実績主義なので、誰が一番大きな売り上げ、利益に貢献するのかが重要。2030年に売上高10兆円を目指しているが、それに一番貢献してくれた人が後継者だ」と語っている。

片山氏についても「新分野を数兆円ビジネスにしたら候補に上がってくる」としており、片山への判断はまだまだこれからというのが実際のところだろう。

現在の日本電産において一番稼いでいる人間は間違いなく永守氏自身。その状況下で、「自分の会社を託してもいい」と言わせる実績を出すことのハードルの高さは尋常ではない。そのお眼鏡にかなう人物がいつ現れるのかは、まだ誰にもわからない。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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