時間切れのマック改革、誰が再建を担うのか 元幹部の出戻りが、さまざまな憶測を呼ぶ

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ただし、今のところ実績といえるのは、ハンバーガーに追加料金でトマトをトッピングできるサービスを導入し、地域限定のソフトクリームの販売を開始した程度。下平副社長は「FCオーナーの意見を取り入れた施策だ」と胸を張るが、業績の改善効果があったようには見えない。

カサノバ社長の打つ施策は迷走し、下平副社長も期待外れ。本来にらみを利かせるはずの米国本社も、業績の低迷でトップが交代するなど自国の立て直しに必死だ。

複数の関係者の話を総合すると、現在社内はプロパー中心の下平派、中途人材で固められたカサノバ派、そして米国派に分かれており、「業務の決断が遅れがち」(現役社員)になっているようだ。

残る選択肢は資本政策か

マクドナルドの経営動向に詳しい法政大学の小川孔輔教授は、「トップを代えても、効果はない。もはや資本構成や株主を変えて、抜本的な立て直しをするしか、再生の道はない」と手厳しい。

カサノバはすでに”死に体だ”と元社員はいう

小川教授が例示するのが台湾のケースだ。現地の報道によれば、米マクドナルド本社は、6月に台湾事業を売却する方針を示した。

それまで直営店軸に400店以上を運営していたが、今後は買い手を募り、FCとして経営主体を転換する計画だ。

米本社は日本法人に49.9%を出資しており、生殺与奪の権を握る。ただ、日本法人の店舗数は約3000店と、台湾より一ケタ多い。

異物混入や巨額赤字の影響も見られず、時価総額は約3500億円前後を維持したまま。米国本社が完全子会社化するにせよ、全株売却して単なるエリアFCにするにせよ、株価がネックとなる。

先行きが見えない中、幹部の出戻りは資本政策の変更につながるのか。カサノバ社長に時間は残されていない。

(撮影:尾形文繁)

「週刊東洋経済」2015年10月31日号<26日発売>「核心リポート04」を転載)

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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常盤 有未 東洋経済 記者

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ときわ ゆうみ / Yuumi Tokiwa

これまでに自動車タイヤ・部品、トラック、輸入車、楽器、スポーツ・アウトドア、コンビニ、外食、通販、美容家電業界を担当。

現在は『週刊東洋経済』編集部で特集の企画・編集を担当するとともに教育業界などを取材。週刊東洋経済臨時増刊『本当に強い大学』編集長。趣味はサッカー、ラーメン研究。休日はダンスフィットネス、フットサルにいそしむ。

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