石橋湛山論 言論と行動 上田美和著 ~「新しい湛山像」を抽出すべく模索

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本書は言論人時代と政治家時代の2部構成となってはいるが、必ずしも網羅的ではなく、前者は湛山の中国論、政党論、太平洋戦争論、後者は憲法論、日中貿易論など選択的テーマで論述されている。これら切り口の根底にある著者の問題意識として、言論人時代と政治家時代とを「架橋的」に論じる必要性と、小日本主義の「持続と断絶」を検証する必要性が指摘されている。並行して著者は、「自立主義と経済合理主義」を基軸に据えて湛山思想の戦前戦後の連続性を解明しようとしている。

新史料に依拠した経済倶楽部の歴史的役割の究明や国会会議録に基づく考察などは評価に値する反面、全体での研究意図や目標が新規性を切り開くまでには至っておらず、今後にさまざまな課題を残したといえよう。

うえだ・みわ
1973年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。同大学大学院文学研究科修士課程、オックスフォード大学大学院を経て、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程史学(日本史)専攻単位取得。

吉川弘文館 3990円 421ページ

  

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