「4代目プリウス」絶対王者に漂う3つの不安 爆発的ヒットの3代目を超えられるか

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ただ、不安材料ばかりでもない。4代目には積雪地域のトヨタ系ディーラーが熱望していた4WD(4輪駆動)仕様がラインナップに加わる。4WDは雪道など悪路に強く、日本では雪国での需要が高い。

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4代目で設定される4WDは降雪地域を中心に強力な販促ツールとなるだろう

筆者が2014年2月に北海道を訪れたときのことだ。あるホンダ販売店のショーウインドウには、「当社のハイブリッドには4WDがあります」といった内容のPOPがデカデカと貼られていた。2013年にフルモデルチェンジを行ったフィット・ハイブリッドと、新規投入されたクロスオーバーSUVのヴェゼルハイブリッドには4WDが設定されていることを強調していたのだ。

トヨタのHVも、「エスティマ」や「ハリアー」などの高額モデルには4WD設定はあったが、プリウス系やアクアなど普及モデル系にはこれまで設定はなかった。北海道のあるトヨタ販売店で話を聞くと、「市内に限れば除雪がしっかりしているのでFFでも走行にそれほど問題はないが、それでも4WDが無いのは販促活動にはつらい」と打ち明けてくれた。

4WD仕様投入で取り逃していた需要を開拓

4WDについては北海道より、本州の東北地方や日本海沿岸地域などの積雪地域のユーザーのほうが、こだわりは大きい。けっして積雪地域のマーケットは大きいとはいえないものの、4代目で予定される4WD仕様の設定はこれまでアプローチできなかったユーザーに対する強力な武器となるだろう。すでにあるトヨタ系販売店では「4WDがあるなら」と4代目を即決で予約申し込たユーザーの例もある。

プリウスは初代(写真)登場から20年近くになっている

初代プリウスがデビューしたのが1997年。2年後の2017年にはデビュー20周年を迎える。量販の次世代エコカーとして最先端を突き進んできたプリウスだが、この20年で「時代が追いついてきた」という表現が似合うほど、周辺環境は進化を続け、それがここ数年で加速している。

プリウスには絶対王者としてのネームバリューがある。3代目以前に乗っているユーザー数も莫大で、買い替え需要も掘り起こしていけるだろう。月販で1万5000台超、年20万台超は堅いのではないか。車名別販売ランキングで見ると上位の常連に名を連ね続けるだろう。とはいえ、ピーク時に年30万台以上を売った3代目のような爆発的ヒットを望むとしたら、かなりハードルが高そうだ。

小林 敦志 フリー編集記者

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こばやし あつし / Atsushi Kobayashi

某メーカー系ディーラーのセールスマンを経て、新車購入情報誌の編集部に入る。その後同誌の編集長を経て、現在はフリー編集者。

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