今夏、アメリカのテレビ業界に激震が走った 業界の寿命を真剣に考えてみた

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米調査会社、ディフュージョングループ(The Diffusion Group)の主席アナリストであり、著述家でもあるアラン・ウォルク氏によると、業界が必要としているのは、従来の放送と同じようにオーバーザトップ(OTT:ブロードバンドインターネット経由で視聴するテレビ放送)の視聴率を計測するシステムであると話す。「昨年の12月、NBCは全体の視聴者のうち、放映と同時に視聴しているのは60%しかいないと認めた。現在は、それ以外のデータを計測できる術はない」と、同氏は話す。

ニールセンは昨年の秋からアドビと組み、デジタルの視聴率を計測するシステムの開発を進めていた。「アドビの人たちは、2015年の秋には展開できると意気込んでいる」と、ウォルク氏は話す。

増える、ケーブルテレビの解約者

人々が有料テレビの契約を解除していると、テレビの衰退論者たちは憂う。そんな彼らの意見を後押しするのは、数字だ。米有料テレビ向け情報サイト「FirerceCable」によると、ケーブルや衛星、通信企業などを合わせたトップ10の番組配給会社のうち、9社は合わせて30万人もの顧客を第2四半期に失ったという。この数字は2014年の第2四半期にテレビ業界が失った32万人に近い。

一方で、この数字は大きく聞こえるが、重要な問題とするには数字が小さすぎるとテレビ支援者たちは反論する。「業界にはまだ1億人以上の有料テレビの加入者がいる。彼らがいう数字は誤差にすぎず、全体と比べれば0.3%ほどにしかならない」と、ウォルク氏は話す。多くの人はこの契約解除のことを、わずかなコードカッティングにすぎないとし、「コードシェービング」と揶揄している。

もちろん、これで配給会社が新たな加入者を増やすことが難しくなってきているという事実を無視して良いというわけではない。事実、コムキャストはケーブルテレビ企業というよりもブロードバンド企業に変化しつつあるのだ。これには、配給会社が「スキニー・バンドル(視聴できる番組数を減らして安く提供するプラン)」やインターネット経由有料テレビサービスを、より多く提供していきたいという背景がある。

テレビ広告は、いまだ成長し続けている

世界四大会計事務所のひとつであるPwC(プライスウォーターハウスクーパース)は、アメリカでのテレビ広告市場が2015年の711億ドルから、2019年には810億ドルに成長すると予想している。これはテレビ支援者たちが指摘することができる大きな金額といえるだろう。対して、アメリカにおけるインターネット広告(動画以外の広告フォーマットも含む)は、IAB(インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー)とPwCがそれぞれ行った調査によると、2014年にやっと500億ドルに近づいた程度だ。

もっとも、これはテレビ広告が安全だと言っているわけではない。米調査会社モフェットナサンソン(MoffettNathanson)のアナリストであるマイケル・ナサンソン氏は、テレビの広告収入が2015年の第2四半期で2.7%減っているとも報告している(この減少は不況やオリンピックなどに関連しておらず、記録上では最大の減少と同氏は発言している)。

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