ほとんど全てのM&Aは、友好的に行われる 「敵対的イメージはメディアの作り話だ」

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業種のライフサイクルは、導入期、成長期、成熟期、最終(衰退)期の四つに分けられる。上位10社のシェアが約10%になると成長期に入り、業界再編が始まる。成熟期はシェア約50%から。シェアが約70%まで進むと、最終期入りで上位10社の統合が始まる。これを私どもは「50:70の法則」と呼んでいる。

50:70の法則がある業種のライフサイクル

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──その法則に従えば、調剤薬局はいよいよ成長期入りですか。

アインファーマシーズ、日本調剤、クオール、総合メディカルが大手の調剤薬局は、上位10社で今10%程度のシェアしかない。シェアが大きくなっていくと、「なの花薬局」などといった薬局ブランドで選ばれる時代に変わってくる。国は在宅介護・医療を推進し、「かかりつけ薬局」の質も向上させようとしている。6年制卒の薬剤師の争奪戦も加わり、調剤薬局は淘汰や売却の方向へと加速されそうだ。まだ10年はM&Aが続くのではないか。

──IT・ソフトウエアや人材派遣でも再編が盛んです。

M&A数がいちばん多いのがIT・ソフトウエア業界で、第2次再編時代に入った。第1次再編時代には技術発展に追いつかないとして、大企業がグループ会社を切り出して売っていった。その結果、大手4社への集約の流れができた。その後、大手は海外企業買いなど別の次元に動く。現在の第2次はその下のクラスの会社同士が集合していくという事象だ。年商6億~10億円の会社が好機と見て、倍近い年商の会社に売っていく動き。少なくともあと5年は増加傾向が続く勢いだ。

人材派遣業は結局、登録者の獲得コストに左右される。高額給与者は著名な派遣会社に登録していくので、名が通ってない会社はほかの派遣会社からの融通で人を獲得してきた。そのモデルも難しい局面を迎え、また大企業の自社派遣も50%以上はできず、そのグループからの切り離しも売却の動きを促している。

──業界再編期こそ売却のベストタイミング?

高く売れ、買い手先のグループの中でもいいポジションになれる。「圧倒的高値の売却」と「会社の飛躍的成長」を実現できるのは、このタイミングだ。

──手順で大事なことは。

最初が肝心だ。最近はブローカーのような人が増えている。むしろアドバイザーとの初期段階での真剣な取り組みが大事だと考えている。だからデューデリジェンス(買収監査)が必要ないほどに、プレ・デューデリジェンスをしっかりするように提案している。プレでリスクを完全に洗い出すことが何より必須なのだ。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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