【産業天気図・証券業(既存大手中心)】市況回復で07年度は増益基調で「晴れ」。銀行グループの侵攻強まる

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証券業界の2007年度は、主要各社ともそろっておおむね増益に転じそうだ。相場急落などの不確定要素がないわけではないが、基本的には株式市況の回復によって投資家の投資意欲が盛り返すうえ、投資信託、外国債券などの金融商品の販売は引き続き好調が続くとみる。『会社四季報』夏号予想では、各社の増益幅を前号からさらに上積みした。本特集では、前回の「曇り」予想を前半、後半とも「晴れ」に変更する。
 日経平均株価は6月に入って終値ベースで1万8000円のカベを突破。2月の同時株安以前の高値水準を回復した。依然調整は続くものの、これまでの上値抵抗だった1万7800円近辺は下値支持に転じたもよう。上値はやや重たい半面で下値も底堅く、先行きにかけて上昇が見込まれている。「上場企業の期初の07年度増益予想は控えめな数値ながら、期中の上方修正が期待されており2ケタ増益も可能」とみて「07年内もしくは07年度末にかけて日経平均は2万円が視野に入った」とみるエコノミストも少なくない。これを受けて、証券各社の最大の収益源である株式委託手数料は好転する見込み。
 また、「貯蓄から投資へ」の流れで、団塊世代の退職金をはじめ資産運用へのニーズが高まる中、証券各社の投信や外債の販売は増加基調が続いている。株式市況悪化の影響を受け大幅減益に転じた各社の前06年度決算においても、投信販売手数料、信託報酬については漸増だった。銀行窓販や郵便局なども投信の拡販に力を入れており、市場が活性化していることも後押し要因となりそうだ。
 今後の最大の注目点は、銀行グループによる証券業の囲い込みだ。
 昨年、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)<8316.東証>はSMBCフレンド証券を完全子会社化。今年は、米シティグループによるTOB(株式公開買い付け)が4月に成功し、日興コーディアルグループ<8603.東証>がシティグループ入りした。
 ほかにも、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)<8306.東証>は三菱UFJ証券<8615.東証>を9月に完全子会社化する。MUFGは、すでに4月にネット専業のカブドットコム証券<8703.東証>への出資比率を40%超に高めたほか、ネット専業で独立系の松井証券<8628.東証>とも提携交渉中だ。みずほフィナンシャルグループ<8411.東証>系の新光証券<8606.東証>は08年1月にみずほ証券と合併する。
 世界的には、金融コングロマリット化の流れが進んでいる。他金融グループとは連携せずに独立路線を貫く証券業トップの野村ホールディングス<8606.東証>や、すでに法人業務でSMBCと連携する大和証券グループ本社<8601.東証>の出方も注目されるところ。さらなる再編が起きる可能性も残っているといえそうだ。
【武政秀明記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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