あの会社も実践!ROEを高める「5つの手法」 重要なのは、「どうやって高めたか」

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本業に力を入れて、自己資本を減らすことなく純利益だけ上げてROEを高めるというのであれば、まったく問題はありません。経営サイドはよく頑張ったということです。

しかし、自己資本比率が高い会社は別として、手っ取り早くROEを高めようとして自社株買いをやりすぎますと、純資産が減少して、あるいは現預金が減少するなどして、会社の安全性に問題が出てくることに注意してください。

安易に高めようとするのは不健全

ある一定限度を超えて、安全性を犠牲にしてまでROEを高めるというのは、経営としては健全ではないと言えます。十分な現預金を持ち、高い自己資本比率を保っている会社であれば、少々自社株買いをしても問題はないでしょうが、そうでない場合は注意しなければなりません。

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自社株買いに使う現預金も、場合によっては、より成長する分野へ投資することで使ったほうが中長期的な株主にはメリットがあることもあり得るのです。

ただ、投資家の中には短期で稼ごうとしている人が少なくないのが実状です。特に機関投資家のファンドマネジャーの中には、3カ月程度のスパンでパフォーマンスを評価される人も多いですから、短期で儲けなければ、クビになるか減給になってしまいます。そのようなファンドマネジャーは、投資先の会社の5年後、10年後のことなど考えていないのです。

会社の経営層は、短期投資をしている投資家たちからプレッシャーをかけられ安易にROEを高めようとしてしまうと、大きな間違いを起こしかねません。日本版スチュワードシップ・コードには、投資家は投資先企業の持続的な発展を促すとありますが、そのような投資家だけではないのです。

このように、ROEだけを考えてしまうと、中長期的な会社の安定性や将来性の懸念、従業員の問題に十分配慮した経営ができなくなる可能性があるということをしっかり認識しておくことが大切です。

小宮 一慶 経営コンサルタント

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こみやかずよし / Kazuyoshi Komiya

小宮コンサルタンツ代表取締役CEO。大企業から中小企業まで、企業規模や業種を問わず、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、講演や新聞・雑誌の執筆、テレビ出演も行う。著書に『「なれる最高の自分」になる方法』『ビジネスマンのための「習慣力」養成講座』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』(日本経済新聞出版社)、『株式投資で勝つための指標が1冊でわかる本』(PHPビジネス新書)など。

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