【産業天気図・証券業(ネット専業)】市況堅調で07年度は「晴れ」。再編進む可能性も

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ネット専業証券の2007年度収益は、おおむね増益に転じそうだ。総じて相場がさえなかった06年度に比べて、直近の株式市況は回復基調にある。相場急落などの不確定要素もなくはないが、相場が比較的堅調に推移することで、個人を中心としたネット投資家の投資意欲は盛り返すとみる。『会社四季報』夏号予想では、各社の増益幅を前号予想からさらに上積み。天気予測は前半、後半とも「晴れ」を維持する。
 日経平均株価は6月に入って終値ベースで1万8000円のカベを突破。2月の同時株安以前の高値水準を回復した。依然調整は続くものの、これまでの上値抵抗だった1万7800円近辺は下値支持に転じたもよう。上値はやや重たい半面で下値も底堅く、先行きにかけて上昇が見込まれている。ジャスダック、東証マザーズ、大証ヘラクレスといった、ネット投資家に人気が高い新興市場も、底打ちの気配を見せている。これを受けて、ネット専業各社の最大の収益源である株式委託手数料は好転するとみている。 
 ただ、気になるのはネット取引の全体動向。日本証券業協会の調べによれば、インターネット取引口座数は依然増加が続いているものの、株式売買代金に占めるネット取引の割合は、05年度をピークに06年度は減少した。これが一時的なのかそれともネット取引自体が飽和したのかは、各社の今後の業績を占う上で注目といえそうだ。
 同様に目が離せないのは再編の行方。火種はいくつか転がっている。
 1つは日興コーディアルグループ<8603.東証>が出資するマネックス・ビーンズ・ホールディングス<8698.東証>。TOB(株式公開買い付け)成功によって、日興が米シティグループ入りしたため、日興グループ内におけるマネックスの立ち位置は微妙になった。マネックスの松本大社長は、新たな提携先を模索していることをコメントしており、同社の出方によっては、他のネット専業大手との再編に発展する可能性もある。
 松井証券<8628.東証>の動きも気になるところだ。松井証券は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)<8306.東証>と提携交渉を進めている。MUFGはグループ内のネット専業証券のカブドットコム証券<8703.東証>への出資比率を4月に40%超まで高めており、松井証券との提携が実現すれば、松井−カブドットコムの連携の可能性も浮上するかもしれない。
 このほか、ネット専業最大手のSBIイー・トレード証券<8701.JQ>は、同じSBIホールディングス<8473.東証>グループ企業で、対面取引主体のSBI証券と10月に合併する予定だ。
【武政秀明記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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