育児と仕事を両立するフリーランス母の戦術 子どもの預け先確保に東奔西走

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2度目に窓口にいた職員はとても親切で、それまでの苦労や不安な気持を1時間にわたって聞き、アドバイスもしてくれた。保活に出口の見えない苦しさを感じていた梅津さんは、このとき初めて希望が感じられ、思わず泣いてしまったという。

結果的に希望の保育園に息子を入園させることができた梅津さんは、自宅でデザインに取り組むだけでなく、週2〜3日は外に出て講師や、レポート記事執筆のための取材をするなど、仕事に費やす時間だけでなくその幅も広げている。

目先の収入より大切なキャリア形成

にわゆりさんや梅津さんのケースを見て、「限られた日にちや時間でしか働けないのなら、パートやアルバイトと変らないのでは」と疑問に思う方もいるかもしれない。今回のイベントの中では具体的な収入の話は出なかったが、「保育料を大きく上回る収入が得られるのでなければ、専業主婦になった方が得では?」と考える人もいるだろう。

フリーランスの中には、早いうちから子どもを預け、フルタイム会社員並に仕事をしてガッツリ稼ぐタイプの女性ももちろんいる。それもありだが、そういった働きかただけが正解ではない。

将来のキャリアアップには繋がりにくい多くのパート・アルバイトと異なり、フリーランスの仕事では自分の専門分野において実績を残していくことができる。ほそぼそとであっても現役で実績を積み上げていくことは、やがて子どもが大きくなって時間が取れるようになった時に大きな財産になる可能性がある。

会社員の場合、時短勤務を選んだとしても働く時間の短縮には限度がある。一方、フリーランスの場合、育児にかなり比重をおきつつも、仕事も続けるという選択も可能。理想のワークライフバランスを追求できる自由さは、ほかに代えがたい大きなメリットだ。

ただし、安定的な収入は保証されていないし、仕事をいったん減らすとそのまま先細りになるリスクもある。長期的な視野に立って、自分のキャリアは自分で切り開いていくという強い気持ちがなければ難しいことを、十分覚悟しておこう。

やつづか えり フリーランスライター、編集者

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Eri Yatsdsuka

コクヨ、ベネッセコーポレーションに勤務後、2010年にフリーランスに。 2013年に組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブメディア『My Desk and Team』開始。 女性の働き方提案メディア『くらしと仕事』の初代編集長(〜2018年3月)を務め、現在はYahoo!ニュース(個人)他で働き方、組織などをテーマに執筆中。 1児の母。

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