北朝鮮が対外関係の改善へと進み始めた理由

金正恩は4年間で実績を積み上げてきた

北朝鮮は中国のハイレベルの派遣決定を歓迎し、劉雲山を厚遇した。朝鮮戦争の遺跡にも案内した。一つは、中国との国境に近い安州にある朝鮮戦争の中国義勇軍烈士陵園であり、もう一つは「朝鮮祖国戦争勝利記念館」だ。「祖国戦争」とはいわゆる朝鮮戦争のことである。北朝鮮は劉雲山をこれらの地に案内することによって、今もなお朝鮮戦争における中国軍の参加を高く評価し、恩義を感じていることを示したのだ。

最近まで両国間に存在したとげとげしい雰囲気はなくなり、代わりに友好的な交流が広がった。パレードを見下ろす天安門上では、金正恩第1書記が劉雲山を3回ハグした。各国のメディアはその光景に戸惑いを覚えたのであろう。一部の中国系新聞は、かつて東ドイツのホーネッカー議長がソ連のブレジネフ書記長とキスしたことになぞらえて金正恩と劉雲山のハグを漫画風に描いていた。

さらなる関係改善には多くのハードル

中朝関係が今後順調に進展すると判断するには早すぎる。金正恩第1書記は習近平主席にまだ会っていない。両国関係が安定的に発展するにはいくつかのハードルを越えなければならないだろう。

そもそも、北朝鮮と中国は朝鮮戦争以来特別な友好関係にありながらも、北朝鮮が中国に反発することも少なくなかった。朝鮮半島が歴史的、文化的に中国の影響を強く受けてきたためであり、また政治的にも北朝鮮と中国の関係は、形式的にはともかく、実質的には平等でないからだ。

さらに、金正恩は2011年末に金正日総書記の後継者となって以降、若年で、経験も浅いが、北朝鮮の新しい指導者として早期に権威を確立しなければならなかった。このことが北朝鮮と中国の関係悪化を加速した。

象徴的な事件が、中国との関係が深かった義理の叔父、張成沢の粛清だった。判明していることから推測するに、張成沢が金正恩の後見人然として中国との関係を取り仕切ろうとしたのが問題であり、金正恩にとっては真の指導者としての権威を確立するのに張成沢が邪魔物となったのだろう。そして、張成沢の粛清により、中国との関係も破壊された。

中国が韓国との関係を進め強化したこと、とくに、習近平主席の韓国訪問も金正恩の権威確立に妨げとなっただろう。習近平に軽視されていると思われると金正恩の国内での立場が悪化するからだ。

北朝鮮から中国に対し、かつての「血で固めた兄弟」とは思えない激烈な言葉を浴びせたのも、また、7月11日の中朝同盟条約締結記念日に従来のように盛大に祝賀しなくなったのも、金正恩が強い指導者であることをアピールしようとしたからだったと思われる。

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