セイコーエプソン、新興国の開拓で業績V字回復へ《オール投資・注目の会社》

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採算低下のデバイス事業 再構築で価格競争に対抗

当面の課題は水晶部品や半導体などを手掛けるデバイス事業。05年に東洋通信機(現・エプソントヨコム)を買収し、水晶部品では世界トップシェアを占める。前11年3月期は世界景気の回復やスマホ需要の拡大を受けて部門営業利益は112億円だったが、今12年3月期は一転して急悪化。部門営業利益は20億円程度にまで急落の見込みだ。最大の要因は単価下落だ。セットメーカーからの値下げ圧力に加え、台湾勢など新興部品メーカーの技術水準の向上で、価格競争は厳しさを増している。

「来期はさらに単価下落は厳しくなる」(両角正幸副社長)とみて、水晶部門の営業・開発を半導体事業に統合。単体部品から半導体と組み合わせたパッケージ部品に舵をきる。同時に部品の内製化も進め、テコ入れを図っている。

今期は、東日本大震災、超円高と予期せぬ外部要因で3度の業績下方修正を強いられた。特に震災では生産拠点の被災や生産部材などの調達に手間取り、売上高で320億円、営業利益で130億円もの減収減益要因となった。

だが、来13年3月期は震災影響が一巡。海外売上高が6割以上と高いため、1円円高になるとドルで3億円、ユーロでは11億円の減益要因になるが、足元では円高も一服し、円安方向に傾いている。海外市場を中心とするIJPの大増産を背景に、業績はV字回復となりそうだ。

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(伊藤崇浩 =オール投資2012年4月1日号)

記事はオール投資執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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