本当の「傾聴力」は、内容の9割を聞き流す力だ 人気の「繰り返し技法」に潜む、2つの落とし穴

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では、どんなやり方がベストなのでしょう。まずはすべてを繰り返すのではなく、キーワードだけを単語で返していくことを意識してください。「はい」「ええ」「そうなの」などの通常の相槌を使いつつ、時折、その相槌の代わりに、相手の使ったキーワードを返していくのです。

そのキーワードはどうやって選ぶのか……。それは、「相手が訴えたい気持ち」の部分です。

これを見極めるためには、しっかりと相手の話に耳を傾け、発せられた言葉だけでなく、気持ちに寄り添う意識が重要。上記の場合は、Aさんの訴えている気持ちは「ものすごく落ち込んでいる」です。その点を「落ち込んでいるんだね」と繰り返せば、あとは通常のやり取りでよいのです。

まじめな人ほど、邪魔な情報にとらわれる

「いつもと様子が違う」「何かを訴えてきている」と感じる時には、真の「聴く力」が必要になります。この時の「聴く」ですが、きちんと聴こうとすればするほど、話の背景や時系列、事実確認にとらわれてしまう傾向があります。なにかの調査について語られている場合には重要ですが、気持ちを聴く場合は、かえって邪魔になることも多いのです。

話し手はたくさんの情報を織り込みながら話します。たとえば、誰かと言い合いになって腹の立つ気持ちを聞いてほしい時は、その人が何歳で、どんな性格で、なんの職業をしているのかなどを盛り込んでくるでしょう。

こんなとき、まじめな方ほど、その情報を一生懸命に記憶したり、不明確な部分を確認してしまう傾向があります。「あれ?その人何歳だったっけ?」などと、個々の情報にとらわれすぎると、話し手の気持ちに寄り添うことは難しくなるのです。

またこの繰り返し技法は、四六時中いつでも使えるものではないことを認識することが大切です。実際、「繰り返し」の聴き方の訓練を受けた上司が部下の扱いに困るというケースがあるのです。

次ページ聴く側が「メンタル不調」に陥るケースも
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