東洋ゴム、「またも不正」で信用失墜の泥沼へ 免震ゴムに続いて防振ゴムでも発覚

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次いで多かったのが、鉄道用防振ゴム。6品種で2万9146個が5社に納入された。多かったのが変圧器吊ゴム。車体の下に取り付けられ、変圧器の振動を抑えるもので2社に1万9099個納入されていた。

車体と台車をつなぐリンク棒に使われるボルスタアンカ緩衝ゴム(ブッシュ型緩衝ゴム)も8586個納品されていた。いずれも納入先については明かしていないが、車両メーカーが多く、その先、どの鉄道会社に使われているのかはつかみづらいとしている。

疑惑が浮上したのは8月20日。8月18~19日に東洋ゴム化工品明石工場でコンプライアンス研修を実施、不正の隠ぺいをなくすよう説明したところ、翌日に問題行為の疑いについて社員からの通報があったという。

ここから事実関係の調査を開始し、9月2日に東洋ゴム化工品から東洋ゴム工業のダイバーテック事業本部長へ報告がなされ、疑いのある製品の出荷を停止。同8日に社内対策本部を設置し、顧客への情報開示を始め、同28日に国土交通省、経済産業省へ報告。10月5日に国土交通省から不正の範囲、内容について早急に報告することや判明した事実関係について速やかに公表するよう指示を受けていた。

国交省は品質監査が機能していないと指摘

国交省からは、8月10日に免震ゴム問題を受けた緊急品質監査の実施結果として「正規品が出荷されていることを確認」と安全宣言したにもかかわらず今回の不正が生じていることから、「再発防止策として実施している品質監査が機能していない」と指摘されている。

免震ゴム問題については、製品補償対策費および製品補償引当金繰入額として、すでに特損304億円を計上している。タイヤ事業が好調のため、営業利益段階では550億円と過去最高を更新する見通しのため、通期純利益は120億円と黒字予想を出していた。

会社側は、今回の事件の業績への影響については、「起こり得る費用発生に対する想定材料が不十分」として現時点では発表していない。防振ゴムは自動車業界向けの売り上げが多いが、同業界向けでは問題はなかったとしている。

問題が発覚した防振ゴムの売り上げは10年間の累計で200億円と小規模で、交換費用も大きくはないとみられる。ただ、不正が繰り返し発覚していることで、信用の毀損は著しいため、他の部門への影響も懸念される。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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