企業年金制度の要諦を早急に再点検せよ

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また、資産運用ビジネスが過当競争化し、年金資産の獲得競争が激化する過程で年金パフォーマンス評価会社が誕生したものの、金融商品取引法で規定された格付け会社のような法的裏付けはいまだにない。法的裏付けがあってすら、かつてサブプライムローンの証券化商品に対し、冷静に見れば常識外の高格付けを格付け会社が与えていた事実を考えると、背筋が寒くなる思いがする。

今回の事件では、早速、基金への天下りを「悪の温床」として取り上げる議論が盛り上がっている。天下りはもちろん問題である。しかし、天下り批判だけでいいのか。厚生年金基金など企業年金全般の制度的な欠落や、当初の理想が画餅化している現実にもっと目を向けるべきだ。

厚生労働省は、今年1月31日付で、1年間の猶予を設けながら「予定利率を現実的な水準に見直し、掛け金にも反映させよ」という主旨の通知を厚生年金基金に出した。また、昨年8月には年金確保支援法を成立させ、最低責任準備金の分割返済など基金の解散に関する特別措置を講じている。だが、これらだけでは足りない。再発防止に向け、受託者責任原則、プルーデントマン・ルールを絵空事にさせない総点検が必要である。

(シニアライター:浪川 攻 =週刊東洋経済2012年3月17日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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