(第39回)製造業が米国や日本にもう戻らない理由

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この時期に投資がなされた新鋭工場として、09年に操業開始したシャープの堺工場、10年4月に稼働したパナソニックの姫路工場、トヨタの小倉工場、キヤノンの大分工場などがある。

しかし、液晶テレビの場合には、国内工場が赤字の原因になった。国内回帰は、円安だけでなく、「薄型テレビは高度の技術を要するので国内生産が競争力を持つ」との判断に基づくものだった。しかし、そうではなかったのだ。中国や韓国での生産が増大し、製品価格の著しい下落に直面することになった。自動車の場合も、積極的に海外生産を進展させた日産自動車が業績を伸ばす半面で、国内生産にこだわったトヨタが立ち後れることになった。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)

(週刊東洋経済2012年3月17日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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