震災から何を学んだか--食の安全と放射能

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学校給食の放射能検査は、住民の要請を機に全国の自治体に広がっている。学校給食の放射能測定に関する請願が市議会で全会一致で決議された東京・町田市では、検出下限値1ベクレル前後までセシウムやヨウ素を測定する取り組みが始まっている。札幌市は学校給食でセシウムやヨウ素の検出が4ベクレル/キログラムを上回る食材を使用しない方針を打ち出している。

福島県二本松市の住民が設立したNPO法人「TEAM二本松」では、購入した測定機を用いて明治の粉ミルクからセシウムを検出。放射能汚染の事実が明るみに出た。

国際環境保護団体グリーンピースは大手スーパーで販売されている鮮魚に含まれている放射能の検査を実施。スーパーの実名とともに数値を公表している。また、大手スーパー5社を対象に、魚介類の仕入れや販売などの際に放射能問題にどれだけ配慮しているかを検証したうえでランキングを作成・公表している。

大手スーパーではイオンが50ベクレル/キログラムを上限とする独自の販売基準を設定。インターネットで食品を販売するオイシックスは1月、放射能測定で「不検出」となった商品だけを扱う、乳児および子ども向けの販売コースを新たに導入した。

反面、メーカーの取り組みは依然として鈍い。乳業各社は厚労省の要請で自主検査結果を公表したものの実施は一度限り。「暫定規制値および新基準値を下回っている」ことを理由に継続的な公表には消極的だ。

とはいえ、牛乳で放射能が検出され続けていることも事実だ。本誌は食品の放射能測定で20年以上の実績を持つたんぽぽ舎・放射能汚染食品測定室に市販の牛乳12本の測定を依頼。12本中2本の牛乳から6ベクレル/キログラムおよび2ベクレル/キログラムのセシウムが検出された。

原発事故後、政府が従来の年間許容被曝線量の5倍まで食品摂取からの被曝を容認する前提で食品に関する暫定規制値を設けたことから、少なからぬ市民が疑問を抱くようになった。そのことが行政や企業への働きかけにつながっている。

今年4月、この暫定規制値は廃止され、新たな基準値が導入される(表)。ただし、新基準値以内であれば安全が保障されるわけではない。食の安全確保に向けての一段の努力が求められている。

(張子溪、平松さわみ、岡田広行 =週刊東洋経済2012年3月17日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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