大和ハウスが「全自動折り畳み機」に描く夢 無名のベンチャーに2000万円を投じたワケ

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今後は2017年に一般家庭向けの折り畳み・仕分けに特化した専用機を発売、2018年には介護福祉施設・病院向けの業務用を投入する予定。2019年には洗濯から乾燥、折り畳み、分配まで備えた「オールインワン」タイプ、2020年には「ホームビルトイン」タイプをスマートハウスにオプションとして装備する計画だ。

同タイプでは、家の中に装備されたランドロイドに汚れた衣類を放り込むだけで、きれいに洗い上げた洗濯物を家族ごとに仕分け、それぞれの部屋のタンスの中にしまい込むまでを行うという。

大和ハウスがまず狙う市場とは?

2020年に投入予定の「ホームビルトイン」タイプでは、大和ハウスとセブンドリーマーズはがっちりタッグを組むことになる。だが、自身も有料老人ホームや介護付き老人ホームを経営する大和ハウスがまず期待しているのは、介護福祉施設向けの専用機だ。

介護施設はまだまだ不足しており、今後も需要は高水準が続く見込みだ。一方で、人手不足という供給制約にもぶち当たっている。そして、介護事業に働き手が集まりにくい原因の1つが長時間労働にある。

たとえば、洗濯にまつわる作業がそうだ。入所者の衣類やタオルなどは、入所者が必要とするときに都度、戻すことが求められる。このため、外部の洗濯業者に出すことは難しい。結果的に、介護ヘルパーは仕事がすべて終了した後や日中の空き時間を見つけ、膨大な量の洗濯物を畳み、仕分け、利用者に届ける作業を繰り返している。

仮にこれらの作業から解放されたらどうだろう。本来の仕事である介護に割く時間が増えるのはもちろん、個人個人の自由な時間を取り戻すこともできる。「最初は価格の問題もあるので、一般家庭より先に有料老人ホームや介護施設での普及が早いかもしれない」(樋口会長)。

介護福祉機器に認定されれば、介護労働環境向上奨励金が支給される。認定までの道は相当険しいが、仮に認定を受けることができれば、購入金額の2分の1(上限300万円)が支給され、普及に弾みがつく。

とはいえ、本格的な普及のためには、量産を行い、価格を下げることが必要だ。また、新規参入による市場の活性化、省エネ技術の装備などランドロイドそのものの洗練も不可欠となる。

家庭向けに衣類乾燥機が販売されたのは1969年。省エネ技術の取り込みによって普及速度が上がったが、発売開始から40年以上経った2015年3月時点でも、普及率は6割弱にすぎない(内閣府「消費動向調査」)。人類が初めて手にする機械が、あまねく広がるには時間が相当かかりそうだ。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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