消費税増税法案提出後は、いったん増税路線封印か

消費税増税法案提出後は、いったん増税路線封印か

塩田潮

 3月8日に2012年度予算案が衆議院で可決された。野党が多数を占める参議院が議決しなくても、4月6日には自然成立する。この後、3月末まで消費税増税法案の国会提出をめぐる攻防が焦点となるが、小沢元民主党代表や亀井国民新党代表など与党内の反対勢力は根強い。

   野田首相は何を重視して、どんな舵取りを目指すのか。「野田さんからは、内閣の運営について、なんでも気がついたことを進言してくれ、と言われている」という元細川首相秘書官・現野田内閣官房参与の成田憲彦・駿河台大教授に先月、会って話を聞いた。

   1993年総選挙に日本新党で初当選した野田首相は細川元首相の愛弟子だが、成田さんは野田内閣発足後の「野田・細川会談」について「二人とも認めていないし、事情を知っている私も認めていない」と前置きした上で、細川氏の野田首相への助言を披露する。

   細川氏は首相時代の94年に「消費税廃止・国民福祉税創設」という増税プランを持ち出してすぐに挫折した。その経験を前提に、「行政改革、無駄削減の実行を打ち出さなかったことと、社会党の合意なしに見切り発車したのが失敗の原因というのが細川さんの強い認識。一つは思い切って行革を、もう一つは手数をかけても与党をまとめてから政府決定を、というのが細川さんのアドバイスです。それに対して、野田首相は、政府が先行して決めるということはあり得ない、と。失敗の教訓は、細川さんから野田首相に伝わっています」と成田さんは話している。

   野田首相は3月6日、国会答弁で「党内に抵抗勢力をつくる手法は取らない」と述べているので、細川氏のアドバイスに従って、3月末までに小沢氏ら反対派と協議や調整を重ねて与党内をまとめ、法案提出後はいったん増税路線を封印して行革と無駄削減に邁進するという舵取りを目指す可能性が強い。それでも衆参ねじれの壁は厚い。通常国会の終盤には、野田首相は、増税法案成立へ一直線か『急がば回れ』の先送り容認か、の岐路に立たされそうだ。そのとき、指南役の細川氏は次はどんな知恵を授けるのだろうか。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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