新「サンダーバード」が代わり映えしない理由 車両デザインに透ける、JR西日本の北陸戦略

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サンダーバード新車両の側面

もともと北陸エリアは関西圏との結びつきが強かった。が、新幹線効果で首都圏との往来は延伸前の4倍に増えており、関西圏の存在感は相対的に低下している。

新しいサンダーバードには、近畿圏との往来をさらに増やしたいというJR西日本の狙いがある。北陸新幹線との共通性をことさら強調せず、従来のデザインを踏襲しているのは、このためだ。

北陸新幹線は2022年度までに敦賀まで延伸されることが決まっている。実現すると大阪―金沢間の所要時間は30分程度短縮され、関西―北陸間の往来が増えることが期待される。そうなれば、サンダーバードの存在感も今以上に際立つ。フルモデルチェンジする時期としてはうってつけだ。

JR西日本の視線の先には、将来の北陸新幹線全線開通がある。敦賀以西には新幹線と在来線の両方を走ることのできるフリーゲージトレインを導入する計画もあるが、本命はフル規格の新幹線だ。

現在の北陸新幹線用の車両をJR東日本はE7系と呼び、JR西日本はW7系と呼ぶ。車両の仕様は同じ。デザインもほぼ同一だ。だが、北陸新幹線が全通し、大阪と北陸を結ぶ新幹線が導入されるようになった場合、JR西日本の独自デザインによる新たな車両が導入される可能性は高い。

いずれ、サンダーバードが全面リニューアルされるとすれば、その姿は大阪―北陸間を走る新幹線を予感させるものになるかもしれない。

北陸で動き出した、もう1つの事例

観光列車「べるもんた」の車両(撮影:尾形文繁)

車両デザインを通して鉄道会社の戦略が垣間見える例は、ほかにもある。JR西日本が10月10日に運行開始する「ベル・モンターニュ・エ・メール(べるもんた)」だ。

この列車は、JR各社と地元自治体が共同で実施する大型観光イベント「デスティネーションキャンペーン」に合わせる形で導入された観光列車。列車名はフランス語で、日本語に訳すと「美しい山と海」。高岡を起点に山側に路線が延びる城端線と、海側に路線が延びる氷見線を走ることから、この名前が付いた。

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