金融クライシス 新グローバル経済と日本の選択 田中直毅著 ~新たな「秩序」を訪ね歩き「今」を解析する

金融クライシス 新グローバル経済と日本の選択 田中直毅著 ~新たな「秩序」を訪ね歩き「今」を解析する

評者 中沢孝夫 福井県立大学特任教授

本書は原油価格の高騰と関連させながら、製造業のあり方に関して、「上流から下流に至る全工程において素材の代替、部品の軽量化、機能の集約化、作業工程の短縮化などが図られなければならない」と指摘する。そして「そのためには情報共有や協調行動が欠かせない」と「系列」を超えた「有志連合」の必要性を述べる。

評者はASEAN諸国を中心に、いつも大企業から中小企業までの、サプライチェーンの聞き取りに歩いているが、そこで見えるのは日本から進出している協力メーカーによる、日本での「系列」を超えた現地での「有志連合」である。能力のある企業同士は国境と系列を同時に超えている。著者は「現代を生きる企業経営者にとって現実に沿うことは余りにも当然であろう」というが、まったくである。決定できない国家(政治)とは異なる。

そのような現実を浮き彫りにしたのがタイの洪水だろう。本書が指摘するように、洪水は「東南アジア諸国との間にお互いを高め合うかたちで積極的に関与してきたのが日本の製造業各社である」ことを明らかにしたのだ。日本のプレゼンスは製造業によって支えられている。わが国の統治システムの無力さは、3・11で改めて思い知らされたが、製造業はなおグローバルな場所で闘う能力をもっていると評者は思っている。とはいえこうした内容紹介は評者の問題意識に引き付け過ぎている。

本書は主にリーマン・ショック以降の世界を、金融や統治を中心として問題の所在を次のように論じたものである。

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