大和証券は独立を維持できるか、格下げ阻止へリストラ加速

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事業主体である証券子会社の格付けは1ノッチ(段階)上とはいえ、親会社は子会社の保証を求められることが多く、債券の発行体でもある。投資不適格転落なら、特に海外で資金調達コストが上昇し、採算の一段悪化は必至。スタンダード&プアーズなど、今は1ノッチ以上高く評価しているほかの格付け会社が追随するリスクも高まる。

格付け会社が問題視しているのは、大和の自己資本や流動性ではなく収益性だ。業績不振の原因は法人部門にある。法人部門を担う大和証券CMは10年度が771億円の最終赤字、今期も第1~3四半期累計で730億円の最終赤字を計上している。リテール、資産運用部門などの黒字を食い潰している格好だ。

なぜ法人部門は赤字続きなのか。まず国内株式市場の取引減少で、それでなくとも薄利の機関投資家向け売買委託手数料が落ち込んでいる。09~10年度の公募増資ラッシュの反動もあり、利益率の高い株式引受業務も激減。加えて、三井住友銀行との合弁解消の影響もある。同行の株式・社債発行の主幹事の座が大和に代わって同行傘下に入ったSMBC日興証券に移り、同行の取引先の社債発行やM&Aの仲介でも大和の取引機会が減少。独立系になったことで、大和が伝統的に強い住友系以外の企業との取引は増えつつあるが、まだ目立った成果が表れていない。

アジア強化の「誤算」 海外は2割人員削減

アジア強化戦略の「誤算」も大きい。大和は合弁解消発表直後の09年11月から、「独立系になって戦略のフリーハンドが増した」(当時社長の鈴木茂晴・現会長)として、アジア強化に打って出た。香港現地法人を「第2本社」化し、アジア関連事業推進のため海外拠点で1000億円規模の資本増強を行った。10年7月には、ベルギーの金融大手KBCグループのグローバルCB(転換社債型新株予約権付社債)部門とアジア株式デリバティブ部門を約10億ドルで買収(合意)した。

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