ポイントは野田首相と谷垣総裁の人間関係の“深さ”

ポイントは野田首相と谷垣総裁の人間関係の“深さ”

塩田潮

 港町の娼婦の哀しい物語を描いたギリシャの名作映画は「夜霧のしのび逢い」だが、3月1日の報道で野田首相と谷垣自民党総裁の「真昼のしのび逢い」の事実が飛び出した。

 両者とも認めていないが、2月25日の正午前後、東京のホテルオークラ内の日本料理店「山里」で約30分、会った模様だ。

 こっそり会うことを極秘会談、密談、密会、しのび逢いなどと表現する。極秘会談は誰かと会ったという事実を秘密にすることに重点があり、密談は内容を秘密にしたい会話というイメージだ。密会、しのび逢いとなると、懇ろの2人が人目を忍んで会うという行動パターンで、逢瀬、逢引きに近く、ぐっと艶っぽくなる。

 首相と自民党総裁がなぜこっそり会ったのか。「決められない政治」が長く続き、ともに手詰まりで八方塞がりだから、打開策を探ったのだろう。4日後の29日に国会で党首討論が行われたが、その前に極秘会談があったと知れば、片手で握手、片手でジャブという感じの迫力不足の党首討論は、八百長とは言わないまでも、意図的に中途半端な闘い方にとどめたのではと疑いたくなる。それとも極秘会談が失敗に終わったことの結果なのか。

 野田首相は消費増税法案の成立、谷垣総裁は衆議院の解散が最大の狙いだから、当然、2つを取引する「話し合い解散」が議題になったはずだが、野田首相は解散の強要を、谷垣総裁は解散なしの増税法案成立という食い逃げを警戒したと思われる。

 会談は不調に終わった可能性が高いが、野田首相は小沢元代表ら反対派の牽制、谷垣総裁には自民党内の無策批判の封じ込めという「内なる敵」対策という効用があった。それだけでなく、今回は出発点で、今後、与野党協議、話し合い解散、あるいは大連立とステージを高めていく突破口という意識を両者が共有したとすれば、大転換劇の始まりとなるかもしれない。

 ポイントは野田首相と谷垣総裁の人間関係だ。極秘会談で角突き合わせる公人同士か、ときどき気軽に密談を交す「話し合える仲」なのか、それとも密会、しのび逢いのレベルの「深い情でつながる2人」という関係を目指すのか。その見極めが必要だろう。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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