「錬金術」によるアメリカの株高は続かない チャイナショックからの反発には「限界」

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ところが、チャイナショックにより株価が大幅に下落し、バブルのリスクが減少した今となっては、FRBは株価が不安定な状況が継続する場合には、株価下支えの政策に転換せざるをえないのではないでしょうか。

バーナンキ前議長の時と同じく、「株高こそ最高の景気対策である」というFRBのDNAは依然として健在であるからです。すなわち、利上げの開始時期を従来よりも先延ばしにするということは、当然の選択肢であるわけです。

ただし注意しなければならないのは、これは裏を返せば、「株価が安定してくれば、利上げを実施しても差し支えない」ということです。その裏付けとなるのが、中国経済の動向になるのは衆目が一致するところでしょう。2015年12月でも2016年3月でも利上げは可能であるというFRBの基本姿勢に変わりはないのです。

利上げ先送りなら、株価はどうなるのか

今後の世界経済の大きなリスクは、「中国経済の大減速」と「米国の利上げ」の2つになることが決定的であるなかで、その一つが先送りされるということは(いつまで先送りされるのかは不透明ですが)、株式市場にとっては意味が大きいといえるでしょう。NYダウ平均株価が1万8000ドルを回復するのは無理だとしても、利上げを先送りするかぎり、1万6000ドル台を維持することは十分に可能であると考えられるからです。

2015年8月~9月における先進国の株価暴落でわかったことは、世界の投資家が米国の利上げをいかに恐れていたかという事実です。そこへ中国株の暴落が起こったことで、リスク回避の動きが急激に高まってしまったといえるでしょう。

要するに、世界の投資家が株式を売るきっかけとして捉えていた「米国の利上げ」が、「中国株暴落」に置き換わってしまったわけなのです。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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