ランニングシューズ戦国時代、ブームの陰に知られざる攻防

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対する日本勢のアシックスやミズノのスタイルは「ボトムアップ型」だ。東京マラソンや大阪マラソンといった大規模な市民マラソン大会への協賛、ランニング教室の開催など地道な草の根活動で、ランナーに直接ブランドを根付かせる戦略を重視している。「ランニングはサッカーなどと違い、個人のライフスタイルの一部といった面があるため、トップダウンは通用しにくい」(アシックスの加藤氏)というスタンスだ。




 しかし、日本人に人気が高い「箱根駅伝」を押さえにきたナイキの戦略は功を奏す可能性があり、迎え撃つ日本勢にとっても脅威となりうる。

そして、アディダスもこの冬、満を持してとびっきりの矢を放ってきた。1月30日に新発売された「アディゼロ匠(タクミ)」シリーズがそれだ。

同シリーズの最大の売りは、過去35年以上にわたり、日本人トップランナー向けの特注シューズを作り続けてきた名工・三村仁司氏が開発を手掛けたことにある。三村氏はもともとアシックスに在籍。オリンピックで金メダルを取った高橋尚子選手、野口みずき選手などのシューズを作った業界内では伝説の職人である。アシックスを定年退職後の10年1月から、アディダスジャパンと専属アドバイザー契約を結んでいる。

「通常の開発期間は1年半程度だが、2年をかけた。アッパー部分だけでも15回作り直すなど、繊維メーカーには苦労をかけた」。三村氏が明かすように、アディゼロ匠の素材や構造には、三村氏の知見やこだわりが盛り込まれている。

アディゼロ匠はフルマラソンを3時間半以内で走る上級者向けであり、ボリュームを狙った商品ではない。それでもアディダスがこのモデルに力を注ぐ理由は、大きく二つある。一つは商品力の向上だ。今回、三村氏との共同開発に携わったアディダスジャパンの萩尾孝平氏は日本専用のランニングシューズとして「アディゼロ」シリーズを05年に開発。そのアディゼロは海外でも高い評価を受け、その後、世界中で販売されるモデルとなった。

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