タオルは「拭くもの」ではなく「振るもの」だ 大阪泉州のタオル屋が応援の風景を変えた

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こうして今では、オーダータオルの売り上げが全体の6割を占めるまでになり、「売り上げがバブル期のピークに戻ってきました」と言われます。

今後も、コンビニや大手スーパー向けのタオルなど新しい市場を開拓しようと、ますます意気軒昂な大和谷社長さんです。

92歳の相談役と200年前の家訓とは?

東進の相談役の宮本克巳さん。小学4年から日記を1日も欠かさずつけている

おまけです。こちらの会社には、宮本克巳さんという相談役がおられます。有名商社に勤め、アディダスの日本上陸を手掛けました。

というと、ずいぶん古い話になるわけですが、それもその筈、宮本さんは今年92歳になられます。いつも壮健で、笑顔を絶やしません。

小学4年から日記を1日も欠かさずつけておられるというから、凄いです。お祖母様が小学4年の宮本少年に「これだけでも続けなさい」と言われたのを守って今日まで来られました。3年日記帳にびっしりとその日の出来事を書かれています。それも、記入欄にきちんと収まっているのです。新聞記事で字数制限に苦労をしている僕としては、これもまた驚きでした。

そんな宮本さん、10年計画で当社の取引先の8割を大手企業に変えたそうです。まったく頭が下がります。ご実家は6代続く商家で、代々伝わる「家訓」を肌身離さずお持ちです。「宮本家 訓」という標題で、文政9年2月11日と記されています。200年前の文章です。見せていただいて、すばらしいと思った言葉があります。

宮本家に代々続く「家訓」

「一、友達は智恵の交換する友を選べ。物を交換する友は別れるのが早い」

わが身に置き換え、しみじみと納得させられました。

いま尽力されているのが、現社長と息子さんの引継問題です。後継者作りには多くの創業者が頭を悩ませますが、こちらでは宮本さんが息子さんのよき相談相手となって、うまくお2人の仲を取り持っています。宮本さんは「竹原さん、『蛻変(ぜいへん)の成長』という言葉があります。蝉のように自然に脱皮を繰り返す、という意味です。このように、企業のバトンタッチがスムーズにいってほしいですね」と言います。

宮本さんという名伯楽を得て、この会社がさらなる「脱皮」を遂げられることを期待しています。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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