《プロに聞く!人事労務Q&A》そもそも職場のパワーハラスメントとはどのようなものですか?

《プロに聞く!人事労務Q&A》そもそも職場のパワーハラスメントとはどのようなものですか?

質問

1月30日のニュースで、「厚生労働省が『職場のパワーハラスメント』の定義発表」を取り上げており、翌日、社内で「職場のパワーハラスメント」の定義が話題となりました。その中で営業部の入社3年目の社員が退職したのは、営業課長によるいじめを受け仕事への意欲を失い、課長と接するのが苦痛になったことが原因ではないかとの話が出ました。

弊社としては、パワーハラスメント問題が発生しないよう、早急に検討したいと思いますので、職場のパワーハラスメントとはどのようなものか教えてください。
(アパレルメーカー:総務担当)

回答
回答者:雇用システム研究所 白石多賀子

「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」問題の背景には、企業間競争の激化による社員への圧力の高まり、職場内のコミュニケーションの希薄化、問題解決機能の低下、上司のマネジメントスキルの低下、上司の価値観と部下の価値観の相違の拡大等があるとされています。

このため円卓会議ワーキング・グループは、パワーハラスメント問題の重要性を社会に喚起すると同時に、どのような行為を職場からなくすべきか、その取組みを明確にしました。

○取組みの必要性と意義
「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」は、労働者の尊厳や人格を侵害する許されない行為です。とりわけ、職務上の地位や人間関係を濫用して意図的に相手をいじめたりすることは許されません。また、意図はなくとも度の過ぎた叱責や指導は、相手の人格を傷つけ仕事への意欲や自信を失わせます。

この行為は、企業の生産性に悪影響を及ぼし貴重な人材の損失となります。さらに企業が加担していなくとも、放置すると裁判で使用者の不法行為責任や安全配慮義務違反が問われ、企業のイメージダウンにもつながります。

○パワーハラスメントに対する共通認識
パワーハラスメントは、業務上の指導と線引きが難しく、行為を受けた人の主観的な判断や、どのような行為が該当するのか人によって判断が異なります。そのためどのような行為を職場からなくすべきかを、労使や関係者が認識を共有できることが必要です。

(1)職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為をいいます。

(2)パワーハラスメントは、上司から部下へ行われるものだけではなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものもあり、職務上の地位や職場内の優位性に限らず人間関係や専門知識など様々な優位性が含まれます。
また、顧客や取引先からの力関係などを背景に、人格・尊厳を侵害される行為も含まれます。 

○職場のパワーハラスメントの行為類型
職場のパワーハラスメントの行為類型として次のものが挙げられます。これらは職場のパワーハラスメントをすべて網羅するものではなく、これ以外の行為にも留意する必要があります。

○職場のパワーハラスメントの予防
パワーハラスメントの実態は多様であり対策に正解はありません。取組みにあたっては、先行しているセクシュアルハラスメント対策などを活用してください。

(1)トップのメッセージ
組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す。
(2)ルールを決める
・就業規則に関係規定を設ける。労使協定を締結する。
・予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。
(3)実態を把握する
・従業員アンケートを実施する。
(4)教育する
・研修を実施する。
(5)周知する
・組織の方針や取組みについて周知・啓発を実施する。

○職場のパワーハラスメントの解決
(1)相談や解決の場を設置する
・企業内と企業外に相談窓口を設置する。職場の対応責任者を決める。
・外部専門家と連携する。
2.再発を防止する。
・行為者に対する再発防止研修を行う。

○“いじめ”による精神障害の労災認定基準
平成23年12月26日、「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」が通達され、今後は、新たな認定基準に基づき判断されます。

“いじめ”のように出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として心理的負担を評価することとなりました。新たな「業務による心理的負荷評価表」が刷新され、具体例が盛り込まれわかりやすくなっていますので研修の参考にしてください。

取組みを始めるにあたって報告書では、「上司の適正な指導を妨げるものにならないようにする。上司の自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、上司としての役割を遂行することが求められる。」と述べていますので留意してください。

なお、今回の報告の参考資料集に、使用者の不法行為責任や債務不履行責任(安全配慮義務違反)が問われた裁判例、労使の取組みの事例がありますので、参考にご活用ください。

(「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」より)


 

白石多賀子(しらいし・たかこ)
東京都社会保険労務士会所属。1985年に雇用システム研究所を設立。企業の労務管理、人事制度設計のコンサルティングを行う一方で、社員・パートの雇用管理に関する講演も行っている。東京地方労働審議会臨時委員、仕事と生活の調和推進会議委員。著書に『パート・高齢者・非正社員の処遇のしくみ』(共著)。


(東洋経済HRオンライン編集部)

 

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