災害弱者への新たな支援策、「訪問看護1人開業」が高齢者の孤立を防ぐ

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福島市内で「NPO法人まごころサービス福島センター」理事長を務める須田弘子さん(67)も、仮設住宅居住者への支援の必要性を強く感じている一人だ。

「避難生活のお年寄りに訪問看護を届けることができたら、どれだけ安心感が高まることか」。そう考えた須田さんは、同じ職場に勤務する看護師の佐藤かつ代さん(66)と話し合い、「被災地特例」として認められた「訪問看護師の1人開業」(通常、訪問看護ステーションの開設には2・5人の看護師が必要)を福島市に申請。1月23日に許可が出て、2月1日から業務を開始した。同センターでは2月中旬までに、市内在住の高齢者2人と、介護保険の訪問看護サービスの契約を結んだ。

ただ、現時点の利用者は震災前から福島市に住む高齢者であり、仮設住宅住民へのサービスはこれからの課題だ。そのため、同センターでは、原子力発電所事故の被害で多くの住民が避難生活を強いられている飯舘村や浪江町、南相馬市にも1人開業の申請書を提出。2月中旬現在、許可を待っている段階だ。

福島市によれば、ほかの市町村から福島市内に避難している住民は4420世帯、1万0958人に上る(1月31日現在)。訪問看護のニーズがどの程度あるかははっきりわからないものの、避難生活が長期化する中で介護や看護が必要な高齢者が増加することは目に見えている。

訪問看護師を支援の要に

2004年の新潟中越地震では、震災後に高齢者が寝たきりや歩行困難になるケースが相次いだ。そのため、身体機能の低下や認知症発症を防ぐうえでも、市町村の保健師による訪問活動は重要だ。

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