日本株は本当に下げ止まったのか もし追加緩和があってもサプライズは小さい

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安倍首相はNYにある国連で演説を行ったほか日本観光もPR。だが円安・株高による景気回復路線からは、方向転換を図っているように見える(写真:ロイター/アフロ)

日本株は中国景気の悪化などを背景に9月29日に直近の安値を更新した。筆者が想定した通り、日経平均株価は同日に一時1万6901円まで下落した。その後は売られ過ぎの反動が出たことに加え、10月1日には日本銀行の追加金融緩和観測が高まったこともあり、急速に値を戻している(終値は1万7722円)。だが、筆者は「これで調整が終わった」と判断するのは早計だと見る。

苦しい立場に立たされたFRBと日銀

海外では、依然としてFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ時期に対する関心が高い。イエレンFRB議長はかなり以前から「年内利上げは確実」と発言しており、現時点では年内の利上げ見送りを言明しにくい状況にある。

FRBは今後も経済指標や外部環境に関係なく「年内利上げ」の可能性を示唆し続けるだろう。だが、結果的にイエレン議長は自らの発言で政策の柔軟性を失ったといえる。

一方、市場では「利上げをすれば市場の不透明感が払拭され、株価が上昇に転じる可能性がある。だから早く利上げすべき」との見方が多い。だが、これも乱暴な考えである。

9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げ見送りの背景を考慮すれば、10月に利上げが実施されれば驚きだ。苦しい立場にあるのは、日銀も同じだ。低迷するCPI(消費者物価指数)の「見せ方」を変え、これまでの政策の正当化を図ろうとしている。

一方の日本政府は、といえば円安による中小企業や家計への負担の増加への批判をかわすため、「新3本の矢」なるものを発表し、これまでの円安・株高による景気回復路線から事実上方向転換を図り、日銀と距離を取り始めているように見える。

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