3月大統領選のロシア、政治も経済も転換期、資源依存から脱却できるか

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石油と天然ガスの埋蔵量では世界有数のロシア。その経済的潜在性と政治の安定感は、世界から注目されているところだ。メドベージェフ・プーチン政権はこれまで、資源依存の経済構造からの脱却と高付加価値な産業の育成を進めてきた。WTO加盟も、今後の経済発展に弾みになるだろう。

現在、ロシア版シリコンバレーの創設や経済特区の設置など、産業育成と投資環境の整備を進めてはいるが、まだ具体策は多くはない。繁雑な許認可手続きなど規制も多く、これに伴う贈収賄などの汚職も頻発している。また、資源収入に安住しており、「ロシア国民はイノベーションを行おうという意識が弱い」との指摘もある。

一方で、日本貿易振興機構(JETRO)モスクワ事務所が昨年、日系企業を対象に行った調査では、7割以上が「ロシアビジネスを拡大させる」と回答したという。日本からは自動車や機械メーカーなど200社以上が事業を展開しており、欧州金融危機など懸念材料はあるが、市場の開拓余地は十分にあるのがロシアでもある。

日本は歴史的に、また北方領土の問題でロシアには親近感が湧きにくい。しかし現在、イランの核開発をめぐって中東地域が混乱する中、原油などの供給が将来ストップする可能性もあり、その代替先としてロシアが注目されている。また、昨年の東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の対策には、チェルノブイリ原発事故を経験したロシアの知見と経験の蓄積が参考になる。こうした点まで含めて、ロシアとは戦略的関係を構築すべきではないだろうか。

(週刊東洋経済2012年2月18日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

photo:Russian Presidential Press and Information Office CC BY-SA

 

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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