除染ガイドラインに異議あり 目先のコスト論より長期的な配慮が必要

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ところが、そういった安全性の高い容器やそれを使った処理方法について、ガイドラインではいっさい触れられていない。ということは、自治体の自主判断でコンクリ容器を使用した場合、補助金が下りない可能性が高いのではないか、と自治体担当者は懸念する。フレキシブルコンテナなら安いもので1枚1000円程度、耐久性を高めたものでも1万5000円だが、コンクリ容器はコンテナパック4個入りサイズで高いものだと60万円強。1000立方メートルの汚染土で5000万円弱かかる。

だが、コンクリ容器は、それ自体で放射線が遮蔽されるので、中間貯蔵施設には大規模な建造物は不要だ。一方、フレキシブルコンテナでは、人里離れた山間部にしか仮置き場を設置できない場合、新たに林道を敷設しなければならない。敷設距離が200メートル程度としても、数百万円は必要だ。しかも中間貯蔵施設の建設や移動時には作業者の安全確保などにコストがかかり、トータルコストとしては差がほとんどないと見る関係者も多い。何よりも、保管上の安全面での不安が残る。

予算の縛りがあるのはわかるが、目先のコスト負担に目を奪われて住民の不安を軽視し、リスクを先送りにするやり方では理解は得られず、早急な処理を妨げる事態になりかねない。自治体の選択に自由度を持たせるような運用が求められる。

(シニアライター:小長洋子 =週刊東洋経済2012年2月18日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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