いまこそ出番 日本型技術経営 現場の知恵は企業の宝 伊丹敬之、東京理科大学MOT研究会編著 ~世界で生きる経営のありようを探る

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また消費者に合わせた味や、価格を抑えるための乳製品の開発により、マーケットを広げてきた歴史もある。そのような日本の酪農生産の技術開発の経過は、国内産業に思えたこの業種が、東アジアで羽ばたく要件をいつのまにか獲得していたことを明らかにしている。

お客が望んでいないハイエンドな商品、あるいは過剰なスペック(性能・機能・品質)の製品としてのガラパゴス化という言葉は、日本のものづくりのありように大きな反省を迫ったが、たしかに技術的に可能であることと、消費者の必要性とは異なっている。それゆえ本書が紹介している、基本機能は強化したが、スペックダウンをして低価格化を実現した工作機械メーカーの取り組みには意味がある。

そのほか、コア技術の生かし方、クレームの発生から潜在しているニーズを発見することなど、本書には日々の仕事のあり方へのたくさんの示唆がある。先端技術や先端材料の開発はむろん大切だが、日常的な工程や設備などを運営する生産技術のイノベーションも同じように重要なことがよくわかるのだ。

編著者は「円高」と「節電」は、かつてのオイルショック克服時と同様の変化を求めていると指摘しているが、そのための手がかりとなる一冊である。

いたみ・ひろゆき
東京理科大学大学院イノベーション研究科教授、一橋大学名誉教授。1945年愛知県に生まれる。一橋大学商学部卒業。米カーネギー・メロン大学経営大学院博士課程修了、Ph.D.を取得。一橋大学大学院商学研究科教授を経る。

日本経済新聞出版社 2100円 295ページ

  

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