おとなのけんか --「政治と経済」と「本音と建前」《宿輪純一のシネマ経済学》

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ここに現在の先進国の経済危機の原因のひとつがあるのではないか。経済政策を決めるのも議会である。先進国は、欧州、米国、そして日本も経済危機状態から抜け出せない。政治が決められないことが問題ではないか。つまり、経済危機を超えて今や政治危機になっているともいえるかもしれない。

欧州では首脳会談があれだけ頻繁に開かれても大事なことは決まらない。米国では上下ねじれ議会でオバマの経済政策が実施できない。ドラッカーも書いていたが、日本の通商問題やTPPは、小選挙区制代議政治がもたらす政治的な国内産業保護の一例ではないか。小選挙区の事情を最優先してしまうため、政治家が国家レベルの利害調整ができない。国家レベルの改革は選挙区を小選挙区から大選挙区にするのも一案ではないかと思う。

あまり偉そうなことは言えないが、人間はさほど合理的な存在ではなく、その不完全な部分を補うのが、経済政策と考えていた。しかし、現在の先進国ではその経済政策が政治によって弱められている気がする。

2月18日公開。



しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・慶應義塾大学経済学部非常勤講師(4月より)・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(4年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。

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