VWは、この多難をどう乗り切るつもりなのか 新経営陣の人物像とその手腕とは

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もう一人、新経営陣の中で注目すべき人物がBMWの前技術担当取締役であり、フォルクスワーゲン・ブランドのCEOに就任してまもないヘルベルト・ディース氏だ。1958年にミュンヘンで生まれたディース氏は、ミュンヘン応用科学大学で学んだ後、ミュンヘン工科大で機械工学博士号を取得した、生粋の”ミュンヘンっ子”。ロバート・ボッシュでジェネラルマネージャーを務めた後、1996年にBMWに入社した。

筆者はディース氏にもインタビューしたことがある。輝かしい経歴から厳格なドイツ人を想像するが、実は気取らないカー・ガイであり、筆者が初めて会ったときには学生時代にイノチェンティ・ミニに乗って旅して回ったことや、ミニの工場を立ち上げるときの苦労を話してくれた。

ディース氏の経歴で目立つのは、サプライヤー出身の経験を活かして、2000~2003年にミニのオックスフォード工場の立ち上げの際にサプライ・チェーンを構築したことだ。新型ミニの製産ラインを立ち上げるにあたって英国におけるサプライヤーを評価したところ、「日本のサプライヤーは対応が迅速で、しっかりした供給体制を持っていたので、活用した」という。

東日本大震災時には東北に足を運んだ

2007年にBMWグループの物流およびサプライヤー・ネットワーク担当取締役に就任した後、ミニの工場立ち上げでの経験を活かして、BMWブランドでも日本のサプライヤーの活用を進めてコスト削減と利益率の向上に貢献した。2011年の東日本大震災の直後、外国人が日本を抜け出す中、ディース氏は被害の大きかった東北地方まで足を運んで、復旧にあたるサプライヤーを激励した。2012年からは研究開発担当となり、トヨタとの提携を通じて日本と関わり続けた。

9月25日に発表された公式コメントで、ディース氏はこう語っている。

「顧客をはじめ、皆様に提示する技術的な解決を見出すためにフルスピードで対応しています。車両を法律に適合させるために、顧客に迅速に情報を伝えます。フォルクスワーゲンは、顧客、販売網、市民の皆様からの信頼を取り戻すべく、人として出来る得るすべてのことを実行します」

世界中の市場に向けて、地域ごとにどれだけの台数の車両に影響があるかといった情報を提供し、認証機関と密接に連携して、救済措置に取り組むとしている。

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