子育て社員が喜ぶ「福利厚生代行業」の狙い 企業には「女性が活躍できるイメージ」を提供

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社会ではこれだけ「女性活躍推進」が話題になっているにもかかわらず、実は具体的な打ち手がわかっている企業は少ない。検討はしているが手段が見つからない、業界他社の動向をうかがっている、女性社員の支援をやりたいけれどできていないという企業が大多数なのだ。特にIT業界には、ベンチャーの勢いのまま規模拡大している企業も多く、こうした企業で働く女性社員が「この先も自分はここで働き続けられるだろうか」と不安を抱く事例には事欠かない。今は20代の若手が中心でも、5年後、10年後には会社として何らかのサポートが必要になる。

それはまさに、サイバーエージェント自身がたどってきた道だ。1998年の設立以来、破竹の勢いで成長してきたが、いまやグループ3000人以上もの従業員を抱える大企業。単体では3割の社員が女性で、管理職の女性割合は23%にも及ぶ。ママ社員と育休中社員は18%にまで増えた(2014年9月末)。このタイミングで、女性支援の人事制度を整備することは必然だったといえる。そして、こうしたフェーズを迎えつつある企業がほかにも数多くあるということは明らかだった。

社員の”ライフ”をサポートする仕組み

ただ、企業が勤務制度を整えるだけでは不十分だと石田社長は考えていた。「企業が仕事と家庭の両立支援を考えるとき、職場での支援体制に手を尽くすことはできても、社員の日常生活にはなかなか踏み込むことができない」(石田社長)。子育て中の社員の仕事上(ワーク)での負荷を軽減することはできても、子育て(ライフ)の負担は変わらないのだ。

だが幸いにも、最近はこうした日常生活の負荷を軽減するようなサービスが社会に数多く登場している。食材宅配、家事代行、育児・介護支援など、人々のニーズが多様化している中でさまざまなサービスが出てきた。そうしたメニューを企業がまとめて導入すれば、社員をサポートする大きな支えになるのではないかと考えたのだ。

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特典一覧の閲覧から利用申し込みまですべてウェブで完結するため、企業は割安な料金で導入できる。IT企業の強みを生かした

こうして作ったのが企業向け社員支援パッケージ「macalon+(マカロンプラス)」だ。家事代行サービス、育児・介護支援、宅配サービス(食材、クリーニング、飲料水など)、知育・育児教育や子ども用品の購入、健康・美容、旅行、レジャー、スキルアップ(資格取得講座)などのジャンルにおいて、さまざまな特典や割引をラインナップし、導入企業の社員とその家族が利用できるようにした。

たとえば、家事代行のベアーズや宿泊・レストラン予約の一休.comなどが割引料金で利用できるほか、民間学童保育サービス利用時の入会金が免除されたり、子ども服のネット通販が特別価格で利用できたりする。

食材宅配のオイシックスからは、食材やレシピがセットされた「Kit Oisix献立コース」が半年間送料無料、初回無料、2000円クーポン付きなどの特別価格で利用できる特典が提供されている。Kit Oisixは、働くママをメインターゲットに作ったサービスだが、企業で働いている人に直接リーチする手段は限られていたという。「家庭内の家事の問題に企業が関与していくことは難しいと考えていたが、このような支援策を通じて、特に、女性の家事や育児の負担を減らせるサービスが広がっていくことはいいことだと思った」とオイシックスの担当者は言う。

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