【産業天気図・建設機械】旺盛な需要続くが、中国市場では競争激化も

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1月の建設機械出荷額は総合計が1816億円で、52カ月連続の前月比プラスになった。内訳は、内需が632億円(28カ月連続プラス)に対し、外需が1183億円(58カ月連続プラス)。業界のカバレッジが97%の日本建設機械工業会では、06年度の出荷額を2兆0706億円へと従来予想を引き上げたが、この数字は前年比16%増で、5年連続の前年比プラス。また、これまで過去最高だった1990年を抜くと同時に、初の2兆円台乗せとなる。
 続く07年度についても工業会は続伸予想で、2兆2548億円と試算している。こちらは9%増とやや鈍化の想定だが、基本的に業界は強気見通しを堅持している。もちろん、先の世界同時株安に象徴されるように、今の建機ブームに変調の兆しが全くない訳ではない。というのも、今回の世界的な建機ブームの火付け役は中国で、同国の高い経済成長が、資源開発や石油開発を加速させてきた。その意味で、中国経済の先行きが今後の建機動向の重要なポイントになる。さらに言えば、その中国の高水準の輸出を支えてきた米国経済の先行きについての判断が重要な意味を持つ。
 しかし現状、米国での建機販売は、住宅着工戸数の減少から住宅向けは減速して来ているものの、それ以外の道路補修や災害復旧などの工事が伸びて下支えしている。このため流通在庫は依然、適正水準にある。中国も、上海株の急落こそあったが、需要面の拡大に衰えは見えていない。ここへ来て為替がやや円高に振れているが、まだ収益面に影響が出るほどの水準ではない。こうした点から、建機需要の先行きについては当面、後退は見られそうもない。
 各社も増産投資に力を入れている。業界トップのコマツ<6301.東証>は、この1月に大型建設鉱山機械の茨城、大型プレス機械の金沢の各工場を立ち上げ、旺盛な需要に応えようとしている。また、日立建機<6305.東証>も08年春の予定で茨城に新工場を計画中だ。一方、業界3位の新キャタピラー三菱に関しては、米国キャタピラーが三菱重工業<7011.東証>に対し、1963年以来の折半出資の見直しを提案してきた。近々、同社はキャタピラーが主導権を持つ形になりそうだ。その狙いは中国戦略の強化と見られ、油圧ショベルで日本メーカーが席捲している中国市場で、日米企業の競争が激化するのは必至だ。
【日暮良一記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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