スカイマーク会長が退任直前に語った真実 井手会長に聞く、スカイ17年の軌跡<前編>

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(撮影:大澤誠)

「1度目の危機のときにはエア・ドゥは大手の傘下に入ったが、われわれは自立のためにずいぶん合理化を実施した。ただ、『雇用は守る』と言い続けた。

2回目の危機の時は『そろそろ利益が上がってきたから、もう少し待遇をよくしてほしい』という話だったが、大手並みにはできないし、整備士や乗員だけ特別扱いはできない。創業時からみんながチームでやるのが基本だ。

子会社をつくって下請け構造にするのではなく、全員正社員で皆同じ立場で仕事ができるようにしようと努めてきた。ただ、折しもさまざまな航空会社が立ち上がろうとしていたので就職口もあったのだろう」

円安の影響が一番大きかった

そして3回目の危機が、今回の経営破綻だ。2度乗り越えた先に待っていたのは、最悪の事態だった。いったい何が分かれ目となったのか。

「いろいろ振り返って反省しているが、大型機A380の導入に関しては、はっきり言って博打に出ていた。(導入までの)3年間はどうなるかわからないが、このままの状況が続くだろうと考えていた。

正直な話、円安が一番大きかった。すでに導入を決めていたA380の購入費用と、中型機A330のリース費はドル建てだったので、大きな負担となった。これらは1ドル=80円前後だったときに決めたプラン。1ドル=100円まで円安が進むことは想定していたが、120円になったときは『もうダメだ』と思った。飛行機を選定しても導入まで2~3年がかかるのが、このビジネスの難しいところ。

もう1つは、われわれがA380の購入をやめようとしたことに対し、エアバスが初めから損害賠償をファックス1本で通告してきたこと。通常、状況が変化した時にはメーカー側も協力してくれる。契約自体を解除するのではなく、ほかの機材に変えられないか、具体的にはA330を増やせないかと検討していた。こうした経験をした航空会社はどこにもないのではないか」

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