中東外交の焦点「イラン核合意」の正しい見方 オバマ政権の歴史的偉業が向かう先とは?

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しかし、米国内の安全保障の関係者、核問題の専門家などは今回の合意を積極的に評価し、オバマ政権を支持した。また、欧州諸国は、米国のような意見の分かれはなく合意支持であり、オバマ政権と関係が怪しくなっていたサウジアラビアも支持を表明した。さらに安保理も合意を支持した。そして米上院でも支持派が増加し、8月末になると、大統領は必要な支持を獲得したと言われるようになった。

下院においてはまだ反対派がかなり残っているようだが、議会全体としては合意を覆すことはないと見られている。一時期、第一次大戦後の国際連盟の場合のように政府の決定を議会が覆す二の舞になると懸念されていたが、オバマ大統領はそのような事態を回避できそうになっているわけだ。

合意によって何が起こるのか

合意が履行されると、まず経済面で変化が出てくる。イランに対する制裁措置が段階的に撤廃されていくに伴い、イラン石油の国際市場への供給を妨げる要因はなくなり、輸出は顕著に増加するだろう。2012年の制裁措置によりイランの石油輸出は半減していたが、これが制裁以前の状態に復すると、大きく言って、100万バレル/日に近い供給増となる。

イランは膨大な石油備蓄を持っているので、供給を増やすのに時間はかからない。中長期的にも石油市場は供給過多となり、価格は減少する傾向になる。イランの石油埋蔵量は、最近の調査でイラクとともに上向きに見直され、世界の第4位と第5位になっているので供給増大のポテンシャリティは大きい。

今回の合意は日本にとっても大きな意味がある。イラン革命以前、イランからの石油輸入が最も多かったときには日本の総輸入量の3割を超えていたが、2013年には5%弱にまで減少していた。このことにかんがみると、日本のイラン石油輸入は今後かなり伸びる可能性があると見るべきだろう。

また、石油の供給の大部分を輸入に頼っている日本として、価格の下落は大歓迎だ。石油価格が中長期的に下落傾向に向かえば日本の原発再開問題にもブレーキがかかる。

石油輸出国にとっても影響がある。資源輸出に依存する程度が高く、近年の価格下落ですでに収入が減っていたロシアにとってはさらなる打撃となる。

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