苦境に立つ野村ホールディングス、脱「リーマン」へ転換

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海外の経営トップにもメスを入れた。今年に入り、全世界の法人部門を統括してきた副社長のジャスジット・バタール氏と、トレーディング部門を率いてきたタルン・ジョットワニ氏が相次ぎ退任。業績悪化に伴う事実上の解任である。共に元リーマン幹部で、社長(09年度は約3億円)をはるかに上回る年俸を得てきた。国内外の社員からはイントラネットを通じ、二人の退任を支持する異常なほど多数の反応があったと関係者は話す。

二人の退任は引責、コスト削減以上の象徴的な意味を持つと考えられる。野村ではリーマン買収後、野村でも、リーマンでもない、ほかの金融機関から転職してきた「第三の血」と呼ばれる社員が増えている。自前で増強した米国では、そうした社員が大半を占める。「彼らの間では、業績が悪くても既得権益のように居座る元リーマン幹部に対し不満も強まっていた」(野村関係者)。そうした不満をかわし、真の融合を図る意味でも、欧州におけるリーマン支配の秩序を解体していくことは避けられなかった。

バタール氏の後任は一時的に柴田拓美COOが引き継いでいる。が、将来的には外部からのスカウトを含め、非リーマンの人材が意識的に登用される可能性は高い。こうした人事が組織の求心力にどのような影響をもたらすかが注目される。

昨年後半以降、それまで海外の赤字を補ってきた国内営業部門も失速している。投資信託販売がブラジルレアルなど通貨選択型ファンドの価格急落や販売規制強化で急減したためだ。とりわけ野村は、こうした手数料の高いハイリスク投信を大量販売してきただけに後遺症は大きい。

今後も株式市場は大きな回復が望みづらく、投信販売も低調となると、国内営業で海外を支える構図は難しい。海外の赤字を早急に解消する必要性はより高まっている。


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