苦境に立つ野村ホールディングス、脱「リーマン」へ転換

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ただ、今回はそこまでの事態は避けられる可能性が高い。野村の自己資本と流動性の高さはムーディーズも認めているためだ。

13年から導入される国際的な自己資本基準「バーゼル3」ベースのコアTier1比率は足元で約9%と、基準の6・5%を楽々クリア。また、手元流動性は日米独英の国債や日銀預金を中心に約700億ドルと、平時の3倍以上に積み上げている。うち6~7割は、資金調達市場の緊張度合いが強い欧州の拠点に主にドルで配分。たとえ新たな無担保資金調達ができなくても、1年以上事業を継続できる十分な流動性を確保しているという。

「最近は外銀のほうがうちにドルを貸してくれと言ってくるぐらいだ。慈善事業じゃないから、なかなか応じられないが……」と野村関係者は打ち明ける。昨年来、日米欧の中央銀行が金融機関へのドル供給を拡充しているが、野村も日銀に担保の国債を持っていけば無制限にドルの供給を受けられる。

売却できる資産も豊富だ。現在、野村は関連会社の野村総合研究所と野村不動産ホールディングスの持ち株売却を検討している。表向きは「非中核部門の売却」という事業戦略上の理由だが、財務上の動機は明らか。売れば2000億円超のキャッシュが手に入る。さらに虎の子に位置づけるのが、傘下の英投資会社テラファーマが保有する英国の軍人用住宅。売却代金2000億円超、売却益1000億円も可能とはじく。

一方、海外での収益性改善のため、大幅なコスト削減も開始した。昨年7月末、まず海外法人部門を中心に年換算4億ドルのコスト削減を発表。11月初めには追加で8億ドルの削減を決めた。計12億ドルのコストのうち6割近くが法人部門の人件費。人員削減は総勢1200人規模に上り、そのほとんどが欧州だ。2~3カ月分の報酬を退職金として渡し、通告翌日から退社するケースが多い。退職勧告は昨年末までにほぼ完了し、来期からフルに効果が出る予定だ。

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