NHK朝ドラ「まれ」にイラッとする人の目線 その姿勢は公共放送に相応しいのか

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と、ここまで言っておきながらなんだが、百歩譲って脇役はそれでもいい。最大の問題はヒロイン・希だ。父親を反面教師に「夢は無用。地道にコツコツ」をモットーに生きてきた希。パティシエになりたいという夢を封印し、高校卒業後に役所勤めをするも、夢をあきらめきれず、わずか1年足らずで役所勤めを辞めて、パティシエになる修業をするのだが、まず、公務員は夢がないと決めつけている。

いざ、パティシエ修業に入るも、肝心の修業シーンはほとんどなく、恋愛エピソードほか余計なエピソードばかりでお茶を濁したかと思ったら、突然、絶妙に敏感な舌を持ち、味覚の違いがわかるという設定を後乗せし、いつの間にやら、シェフ(小日向文世)の信頼を得る存在に。ケーキ作りのシーンも、作りながら喋るわ、髪はボサボサ、手、洗ったの? と疑問ばかり。ケーキ屋さんはこんなに不潔なのかと。

で、スーシェフに昇格したと思いきや、能登に帰り、塗師屋のおかみ修業をすると言い出す始末(この間、まれは幼馴染の輪島塗職人・圭太と結婚していた)。さらに、地元でケーキ屋をオープンするも、子どもを身ごもり開店休業。あっという間に子供は大きくなり、現在、世界一のパティシエになる夢を叶えるために、なにやら有名なコンクールに出場するために、日夜レシピづくりに勤しむというのがここまでの話だ。

話があっちこっちに飛び、整合性がない

なにやらまとめサイトのようになってしまったが、ようするに、まれ自身が、ひたすらパティシエ道に邁進するのかと思いきや、あっちに行きこっちに行って、話の整合性はなく、たまに思い出したように「世界一のパティシエになる」と言い出したかと思いきや、なにかのコンクールに出場するという、「地道にコツコツ」とは真反対の生き方に視聴者の批判的な声が集まっている。

そのコンクールも、実にいい加減。前回のママさんパティシエコンクールは、あらかじめ作ってきたケーキを持ち寄り、そこから優勝者が選ばれるもので、「作るところはやらんのかい!」とテレビの前で思わず突っ込んでしまったほど。しかも、それをテレビ中継しているという設定だから笑わせる。これまでにも、なにかというと、コンテストやら対決やらが出てきたが、そのたびに、いつもテレビ中継されているというありえない設定、なんでかんでもイベント化する演出だ。

人生設計を大きな紙に書いて説明したり、コンテストのためのケーキのアイデアを大きな透明ボードに書いたり、頭の中を視覚化させるところも、視聴者にわかりやすくということなのかもしれないが、本来は台詞や演技で見せるべきものだ。よく見ると、透明ボードには「世界征服」などと書いてあり、意味がわからない。ここ、笑うとこ? と制作者に聞いてみたいところだ。横浜編での不器用な後輩(福田彩乃)の唐突な滝川クリスタルのものまねも、まれの先輩・陶子の「な~め~す~ぎ~」も笑えない。

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