中国関連、資生堂と日本ペイントを分析する 大波乱の中国経済、両社の業績はどうなるか

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続いて、貸借対照表(5~6ページ)から安全性を見てみましょう。自己資本比率は47.9%と、非常に高い水準です。短期的な安全性を示す流動比率(流動資産÷流動負債)も218.6%ありますから、こちらも十分高い。安全性には全く問題ありません。

ただ、6月までの業績はかなり好調だと言えますが、中国景気の脆弱さが明るみに出たのは7月以降の話です。今後、中国景気の動向によっては、戦略の変更を余儀なくされる可能性もありますので、注意が必要です(中国景気の先行きについては、後ほど詳しく説明します)。それでも、資生堂は安全性、収益性ともに優秀な会社ですから、大きな問題はないと思います。

買収で業績を大きく伸ばした日本ペイント

次に、日本ペイントの平成28年3月期 第1四半期決算(2015年4〜6月)を見ていきます。日本ペイントは、ここ一年で株価が2倍以上に上がり、この1カ月余りでほぼ元の水準まで急落しました。なぜ、これほどまでに乱高下しているのでしょうか。

まずは、状況を分析します。損益計算書(7ページ)から業績を見ますと、売上高は92.1%増の1201億円。営業利益も60.6%増の129億円となっています。大幅に伸びている理由は、昨年度にシンガポールの塗料会社のウットラムとアジアの合弁会社を買収したことです。

売上高営業利益率は、10.8%。前の期の12.9%より悪化していますが、それでも10%を超えていますから、収益力は十分高いと言えるでしょう。

貸借対照表(5~6ページ)から安全性を見ますと、自己資本比率は58.6%、流動比率は191.8%、いずれもかなり高い水準です。しかも、社債や借入金などの有利子負債も、資産合計約8000億円に対して200億円ほどしかありません。財務内容も非常にいい会社ですね。

収益性、安全性ともに問題ありませんが、日本ペイントはアジア事業の割合が全体の16.5%と高い水準にあるため、先行き懸念が広がったことで株価が大幅に下落しました。

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