石油化学大再編を阻む壁、エチレン余剰に苦悶

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だが、近年は天然ガス由来の安価なエチレンに強みを持つ中東や、最大の需要地である中国で、年100万トン級以上となる大型エチレンプラントの新・増設が相次いだ。日本勢が原料に使うナフサ(粗製ガソリン)と中東の天然ガスを比べると、「足元では価格差が30倍近い」(4月に三菱化学の次期社長に就任する石塚博昭専務)。歴史的な円高もあり、日本勢はコスト競争力や地理的条件で圧倒的に不利な立場にある。輸出の急減は、まさにかねて想定されたとおりとなっているのだ。

こうしたグローバル市場の潮流に対し、日本でも一部の石化大手は、先手を打って再編を進めてきた。

国内では計10社が各地の石油化学コンビナートで計15基のエチレン設備を運営する。このうち千葉・市原地区では三井化学と出光興産が10年4月にエチレン設備2基の運営を統合。翌11年4月には岡山・水島地区でも三菱化学と旭化成が、同2基の生産を一体化し、生産量が落ちても採算が取れるよう設備のダウンサイジングも進めた。需要に見合ったエチレンや化成品の柔軟な生産体制の整備が可能となったようだ。

欧州の債務危機は深刻化し、米国経済の回復も遅い。頼みの中国が外需低迷で景気減速を強いられる中、日本の石化産業は輸出の急速な回復を見込みにくい。エチレンの余剰は鮮明で、低稼働が続けば各社の業績悪化につながりかねない。


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